今まで一番嬉しい「ベスト6thマン」
現役生活に終わりを告げた吉田亜沙美

2019年03月26日



文・写真:hangtime編集部/写真:大澤智子

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 3月25日、吉田亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)の引退会見が都内で行われた。

 「私、吉田亜沙美は3月3日のファイナルで、ユニフォームを脱ぐ決断をしました。13年の現役生活の中で、JXに所属し、素晴らしいスタッフにめぐり会えて、最高の仲間と出会い、バスケットボールファン、JXファンの方に囲まれて、大好きなバスケットをすることができて本当に幸せに思っています。今日は泣きたくないので、泣かせるようなご質問はしないでください。よろしくお願いします」

 大勢のメディアを前に、笑顔の吉田のこんな挨拶から会見は始まった。

 記者1名につき質問は2つまでという制限がついたが、次から次にマイクが渡る。「引退を決めた時期は?」「印象に残った試合は?」「引退に悔いはない?」「来年の東京オリンピックにどう関わるのか?」……さまざまな質問を受けながらその一つひとつに、ていねいに言葉選びながら、吉田は答えていった。その表情は穏やかであり、自分の決断をしっかり受け止めている印象が強かった。

 引退の理由に挙げたのはメンタル面、特にリオオリンピックの後は、“東京”も視野に入れつつも、“気持ちが上がってこなかった。中途半端で代表活動はできない”そう感じたという。昨シーズン途中から引退を考え始め、この日の会見に至った。

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「今までいただいた個人賞の中で、一番嬉しいです」
 シーズン終了後、『第20回 Wリーグ アウォード』の受賞者にコメントを求めた際、ベスト6thマンを受賞した吉田から聞いた言葉だ。記者会見で配られた資料をあらためて見ると、2006-07シーズンのデビュー以来(2007-08シーズンを除き〉、Wリーグ、皇后杯で何かしら個人賞を受賞している。2010年のワールドカップ(世界選手権)ではアシスト王に輝き、2016年リオオリンピックでは主将としてベスト8進出の原動力となった。

 新人王に始まり、ベスト5の常連。MVP(レギュラーシーズン、プレーオフ)も何度も受賞している吉田にとって、ラストシーズンに受賞したベスト6thマンは特別な意味を持っているのだろう。「ベンチスタートは記憶がない……」という彼女が、自ら申し出て控えに回り、後輩たちをサポートしながら得た賞だったのだ。

 2018-19シーズンが始まる前に、自分から『控えに回りたい』と佐藤清美ヘッドコーチに伝えたという。その中で自分の役目は、明確だった。

 「ベンチスタートなので、悪くなった流れを変えてあげる、他の4人の心の支えになれればと考えていました。ディフェンスからブレイクという速い展開のバスケットを引き出してあげようと常に意識していました。そこが評価されての受賞だと思うので、とても嬉しかったですね」

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 評価はまさにその通りで、チームはもとより、対戦相手にも、試合を観たすべてのファンにも、あらためて吉田の存在感を示したシーズンだった。ところが本人は、「自分が出て流れが変えられなかったと感じることがありました。コンスタントに自分の役割をこなせるようにしなければいけない。良い流れに変えてあげられるプレーをしなければいかなかったと反省するところもあります」とコメントした。

 引退のことなどこれっぽちも考えていなかったので、「今シーズン、ベンチスタートで見つけたモチベーションがあったと思いますが?」という問いかけをしたが、こんな答えが返って。

 「面白かったのは……スタートとはまったく違った緊張感や責任感があるとわかりました。それは新しい発見で、新たな挑戦でした。緊張感を持続させていくのはしんどかったし、難しさがありましたが、宮崎(早織)や石原(愛子)はそうだったわけで、大変なんだなぁって。メンバーチェンジは何かを期待されて出されるわけですから、スタートとはまったく違う緊張感を持ってプレーしていたんだと感じました」

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 スタートを任され、キャプテンを務めてチームのリーグ11連覇に貢献してきた。「JAPAN」のユニフォームを着て、代表チームを引っ張ってきた。ベンチスタートを経験し、また新たなキャリアを積み上げた。が、吉田亜沙美は引退を決意した。「代表活動だけ継続する可能性は?」「今後、指導者になる道は?」……矢継ぎ早の質問に対し、まだ未定だと答えた。

 “少しバスケットから離れて、またバスケットに関わることができたら……”というのが本音かもしれない。必要な充電期間を過ごしたら、また、さわやかな笑顔とともに戻って来るのを待ちたいと思う。後輩たちは“リュウ”の背中を見て、しっかり成長しているから大丈夫。これからも、どんな形であれ、またみんなと一緒にバスケットボールの未来を語り続けるに違いない。

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