三菱電機コアラーズの復権
そしてさらなる高みを目指して

2019年03月20日



文:吉川哲彦/写真提供:Wリーグ

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 Wリーグ創設20年目の記念すべきシーズンは、JX-ENEOSサンフラワーズの優勝で幕を閉じた。シャンソン化粧品シャンソンVマジックが前身の日本リーグ時代と合わせて10連覇を達成したのは、リーグ創設1年目の1999-2000シーズン。JX-ENEOSはリーグの節目となる今シーズンにその記録を塗り替え、11連覇という新たな金字塔を打ち立ててみせた。20シーズン中16シーズンで頂点に立っているJX-ENEOSの牙城は今シーズンも揺るがなかった。

 ここ2シーズンは、選手の移籍に関する規約が改定されたことで有力選手の移籍が増加。複数のチームが打倒JX-ENEOSの目標を掲げて積極的に補強を進めながらも、その壁に挑んではことごとくはね返されてきた。

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 しかしながら、今シーズンのファイナルでJX-ENEOSに挑んだ三菱電機コアラーズは、JX-ENEOSが王朝を築いたこの11年の間は、どちらかといえば存在感の薄かったチームだ。チームとしての歴史の長さではむしろ他をしのいでいるのだが、Wリーグになってからの成績が必ずしも芳しいものでなかったことも確か。JX-ENEOSの連覇が始まった2008-09シーズン、三菱電機コアラーズは当時の2部にあたるW1リーグに所属。入替戦を制して翌シーズンはWリーグに昇格したが、1シーズンでW1リーグに再降格するなど、JX-ENEOSとは対照的に低迷期の真っ只中だった。1シーズンで再び昇格し、その後リーグ統合で12チームとなってからは常に中位の成績。前述の通り複数のチームがJX-ENEOSに立ち向かう勢力図の中で、三菱電機は上位争いに絡むことができない状況が続いた。

 ただ、Wリーグの誕生前後まで遡れば、当時2強と呼ばれていたJX-ENEOS(当時のチーム名はジャパンエナジー)とシャンソン化粧品に次ぐ3番手につけていたのは、実は三菱電機だ。実際に2強を苦しめ、土をつけたこともあるその時のエースは古賀京子。結局2強の壁は崩せないまま2004年に現役を退いたが、その古賀がコーチとしてチームに戻り、2016年にはヘッドコーチに就任。その3シーズン目となる今シーズンはレギュラーシーズン3位に躍進し、プレーオフセミファイナルでは同2位のトヨタ自動車アンテロープスを撃破。往年の名選手に率いられ、チームとして初めてファイナルに進出したことは特筆すべき出来事だ。

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 「2強と言われていた頃は『手が届かない』という感じだった」と回想する古賀HCだが、自らが今率いるチームについては「アプローチを変えたり、何か強みを作ったりしながらやってきて、追いつくことはできるのかなと感じています」と可能性を感じている様子だ。はたして古賀HCは、リーグ中位に甘んじていた三菱電機をどう変えたのか。

 「私の性格上、簡単に諦めるのが嫌いなんです。私自身、カッコいい選手ではなかったんです。不器用で、プレーを覚えるのも一生懸命練習して人の倍かかる。でも私が就任した時、そこでやめてしまう選手が見受けられたんですよ。それが悔しくて、まずそこから直しました。今回ファイナルまで来たのは、諦めない強さがついたということだと思います」

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 そのファイナルの戦いぶりこそが、「諦めない強さ」を身につけた何よりの証明だった。1戦目は完敗だったものの、2戦目は前半の16点ビハインドから粘りを見せる。3Q中盤から根本葉瑠乃が3Pシュート3本を沈めるなどして女王を脅かし、JX-ENEOSはこのクォーターだけで2度のタイムアウトを取らざるを得なかった。最終的には女王の地力に屈する結果となったが、三菱電機は最後の1秒までボールを追い、吉田亜沙美のパスミスを誘うとボールを拾った渡邉亜弥はセンターライン付近からすかさずシュート。タイムアップのブザーとともにリングに吸い込まれ、スコアは76-82。JX-ENEOSの11連覇中のファイナルの戦いぶりを振り返ると、6点差はその絶対女王に最も肉薄した数字と言っていい。

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 “感謝の気持ち”と“試合を楽しむ”――トヨタ自動車を破ったセミファイナルと、JX-ENEOSにあと一歩届かなかったファイナルで、選手たちが試合後に口にした言葉だ。古賀HCの意識改革の末にそのメンタリティを手に入れた彼女たちが、今回の準優勝という結果に満足することはないだろう。絶対女王の高く厚い壁を打ち破るその日まで、三菱電機というチームは歩みを止めない。

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 「この舞台に立ったことは絶対に忘れてはいけないし、ここに立てなかった時期の辛さもみんな嫌というほど味わっている。1本の重みはここまでずっと経験してきたこと。それを踏まえて、もう一段階上がっていきたいと思います」(古賀HC)