2019年10月09日
NBA JAPAN GAMES 2019開催
世界最高峰のプレーが繰り広げられる夢の空間
文:川西祐介/写真:楽天株式会社 Provided by Rakuten
10月8日、トロント・ラプターズとヒューストン・ロケッツによる、NBA JAPAN GAMES 2019がさいたまスーパーアリーナで開催された。
NBA JAPAN GAMESは1990年から2003年にかけて数年おきに、東京体育館や横浜アリーナ、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナなどで12試合が行われ、今回は実に16年振りとなる。これまではレギュラーシーズンとしての開催で、対戦は同じカンファレンスに所属するチーム同士だったが、今回はプレシーズンゲーム。そのため、イースタンカンファレンス所属のラプターズとウェスタンカンファレンス所属のロケッツという、オーバーカンファレンスのゲームとなった。
ラプターズは、1995-96シーズンからNBAに加入した、NBAの中では比較的新しいチームで、唯一ホームがアメリカ国外、カナダのトロントにある。昨シーズンのワールドチャンピオンチームであり、前年の優勝チームがNBA JAPAN GAMESで試合をするのは初めのことだ。
優勝の立役者、ファイナルMVPのクワイ・レナードは移籍してしまったが、チームの顔とも言えるカイル・ラウリーや先のワールドカップでも優勝したスペインチームのセンター、マルク・ガソルの他、成長著しいパスカル・シアカムなどは残留。ファイナルMVPが次のシーズンに移籍というのは初めてのことだけに、どんなチームに仕上げようとしているのか、そんなところも注目される。

16年振りに夢の試合が幕を開ける
ロケッツは、1994-95、1995-96シーズンにNBAを連覇したチーム。ここ2シーズンは、ウェスタンカンファレンスファイナルまで進出している、こちらも強豪チームだ。1992年にもNBA JAPAN GAMESで来日しており、その時はシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)に連敗しており、“初勝利”を狙いたい。
ロケッツの顔はもちろん、ジェームズ・ハーデン。ここ2シーズンはリーグ得点王で、とくに昨シーズンは平均36.1点という数字を残している。彼の新しいパートナーが、サンダーから加入したラッセル・ウェストブルックだ。得点、リバウンド、アシストで平均2桁を記録して、シーズントリプルダブルを3シーズン連続で達成している。このスーパーガードコンビの融合がどうなるのか大いに楽しみだ。
試合前から、さいたまスーパーアリーナはファンの熱気で包まれた。NBAプレーヤー達も心得たもので、アップ中も魅せるプレーを繰り出すと、それを見たファンが歓声を上げる。プレーヤーとファンが一体となって、会場全体を盛り上げていくところにも“NBAの凄さ”を感じさせてくれた。
スターターの紹介では、ロケッツのハーデンに対する声援がもっとも大きく、続いたのがウェストブルック。この2人に対する期待の大きさがわかる。ラプターズはラウリーとガソルがプレーしないため、シアカムに対する歓声がチームで一番だった。

1Q。ロケッツのスターターは、ハーデンとウェストブルックに加えて、エリック・ゴードンも名を連ねるスモールラインナップ。それにPJ・タッカーとクリント・カペラが加わる。ラプターズは、フレッド・バンブリードとノーマン・パウエルのバックコート、OG・アヌノビー、サージ・イバカ、そしてシアカムの5人だ。
最初の得点はラプターズのイバカのポストプレーから。NBAらしい、ビッグマン同士のぶつかり合いにファンの大きな声が上がる。ロケッツが、ウェストブルックのアシストからハーデンの3Pシュートでやり返すと、早くもアリーナのボルテージは最高潮だ。
プレシーズンということもあり、序盤は両チームともディフェンスがそれほど厳しくなかった。それだけに巧みなドリブルのテクニックや高確率で決まるシュートといったプレーが繰り出され、ワンプレーワンプレーに歓声が上がる。そんな魅せるプレーだけでなく、パスひとつの速さ、ドリブルの力強さ、ファストブレイクのスピードなどがハイレベルで、さすがNBA!と思わされる。
最初のクォーターは、ラプターズ40点、ロケッツ44点と、超ハイスコアの滑り出し。ロケッツは21点をハーデンが稼いだ。

続く2Qはラプターズのアヌノビーの豪快なダンクから始まる。ラプターズは3年目のパトリック・マコー、2年目のアヌノビー、クリス・ブーシェー、ルーキーのテレンス・デイビス、マット・トーマスと若いラインナップ。
しかし、ロケッツはウェストブルックやゴードン、カペラらベテラン、中堅がコートに残ったまま。“若さ”では、老獪なウェストブルックは止められず、彼の独壇場に。6分弱のプレーで9点を稼ぎ、徐々にロケッツがリードを広げていく。そのウェストブルックと交代でハーデンが入ってくると、ファストブレイクでラプターズのロンデイ・ホリス・ジェファーソンの股を通すドリブルで抜き、会場をまたどよめかせるなど、流れは完全にロケッツのものになった。
そしてこのクォーター残り9.3秒。ファンが一番見たかったプレーが繰り出された。ハーデンがステップバックでの3Pシュートを決めたのだ。前半終えて、ラプターズ73点、ロケッツ85点と、まるで、1試合終了後くらいの得点を記録した。

世界最高峰のプレーに酔いしれるファン
後半、3Q。ラプターズがパウエルに代えてマコーをスタートに入れた以外は、両チームともこの試合のスターターと同じラインナップで始まる。このクォーターはダンクが連発され、3Pシュートも高確率で決めあうなど、ファンを楽しませるプレーが多くあった。ミスもあったが、 NBAという最高峰のプレーを観ているというファンの満足度は高まったのではないだろうか。ラプターズが少し点差をつめて、99-106。7点を追って、勝負の最終クォーターへ。
ラプターズは2Qと同じく若手のラインナップ。ロケッツはこのクォーター、調整のためかハーデンとウェストブルックがプレーしなかった。こちらも若い選手にオースティン・リバース、ライアン・アンダーソンのベテランがミックスされたメンバーだ。前半に出場時間があったラプターズの若手の方が、動きのキレが良く、3分が過ぎたところで114-114と追いつく。ロケッツのリバースがベテランらしく4点を返すが、ラプターズはルーキー、オシェイ・ブリセットのダンク、マルコム・ミラーの3Pシュートで再逆転。そこからは、リードを譲らず、ラプターズが134-129と逆転勝利。ロケッツはNBA JAPAN GAMES 3連敗となった。

試合後の会見では、ラプターズのニック・ナースHC、ロケッツのマイク・ダントーニHCともに、ここまでのチームの仕上がりに納得できている様子だった。この日試合に出ていないベテランと若い選手のロスター争いによるコンディションのアップに期待したいという考え方も共通していた。
ロケッツのハーデンとウェストブルック、ラプターズのシアカムとバンブリードら主力選手も、この段階での仕上がり具合は良いとしながらも、目標はNBAの優勝のみで、シーズンが始まるまでにもっとコンディションを上げたいと語った。
また、コーチ、選手全員に共通していたのは、さいたまスーパーアリーナと集まったファンの声援、そして熱気の素晴らしさへの感謝の言葉。NBA JAPAN GAMESという夢のような空間、試合は明日もう1試合残っている。