3x3

YOSKの夢はぬまの夢
再び交差した2人の道

2019年08月09日



文:吉川哲彦/写真:3×3.EXE PREMIER    20190706_fukagawa_s120

 現役BリーガーやWリーグ経験者、叩き上げのストリートボーラーなど、今年の3×3.EXE PREMIERも様々なバックグラウンドを持つ選手が集まっている。来年の東京オリンピックを見据え、JBA(日本バスケットボール協会)もB.LEAGUEの有力選手を代表合宿に多く招集するようになり、杉浦佑成(TACHIKAWA DICE.EXE)のようにこの夏は3×3.EXE PREMIERで腕を磨こうとする選手も少なくない。

 そんな彼らを、既存の選手も手をこまねいて見ているわけではない。とりわけ、現時点で個人ポイントのランキング上位に名を連ねる選手は、彼らの前に立ちはだかろうと意気込んでいるはずだ。今回はその中から齋藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE)をピックアップ。信州ブレイブウォリアーズでプレーした2017-18シーズンを最後に5人制から退き、東京五輪出場を目指して3×3に転向。すぐにアジャストして上位ランカーとなり、日本代表の有力候補の1人に名乗りを上げた。

 ここまで上り詰めたその飛躍の裏に、ある1人の男の存在があることを決して忘れてはならない。今シーズン3×3.EXE PREMIERに参入したLEOVISTA BB.EXEの沼田泰朋だ。ここでは2人をそれぞれ「YOSK」、「ぬま」と呼んで稿を進めたい。

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背中を押す、そのひと言
 千葉県柏市を拠点に活動するストリートボールチーム「勉族」の代表であるぬまは、当時のトップボーラーが集結して2005年に設立されたLEGENDや、それに続いて立ち上げられたSOMECITYなど、常にストリートの最前線でプレーしてきた。そのぬまが実力を見込んで勉族に招き入れたのが、LEGENDに加わったばかりのYOSKだ。当時のチャラ男キャラは“笑バスケ”を標榜する勉族のカラーにもよくフィットしたが、向上心の強いYOSKは「おまえはこのレベルでやる人間じゃない」というぬまの言葉に背中を押されてプロ転向を決意。ぬまはYOSKとともに自らもbjリーグのトライアウトに挑戦した。

 「ぬまさんが一緒に受けてくれたことがすごく心強かった。あれがなければ、ちょっとしたプライドが邪魔して重たい腰を上げられなかったと思う。プロに行けと言ってくれた人は他にもいましたし、その人たちにももちろん感謝していますが、ぬまさんは当時僕より有名で人に見られる立場だったわけで、そんな人が『落ちるかもしれない』という恥ずかしさを気にせずに一緒に受けてくれて、『やらなきゃ』って思いましたね」(YOSK)

 「あいつは実力あるから。自分はただきっかけを作っただけ。でもそれが今はここまでつながってきて、どんどんオリンピックに向かってる感じで半端ないね。なんとか食い込んでほしいし、もしそうなったらめちゃくちゃ嬉しいよ」(ぬま)

 ぬまの想いも背負うYOSKは、「『誰がどう見てもあいつを選んだほうがいいでしょ』と思われるようなパフォーマンスを心がけたい」と代表入りへの強い決意を隠さない。3×3のキャリアは手探りから始まったが、この1年間で個人として十分な結果を残してきた。今、YOSKは次のステップに差しかかっているところだ。

 「同じチームには(小林)大祐もいて、もちろん大祐とはチームメートとして共有しないといけないことがたくさんあるけど、代表争いではやはりライバルになる。それも考えた上で、チームとして良い時間帯を伸ばしたい。自分のパフォーマンスだけを見せるというよりは、チームの中で自分のパフォーマンスがどう活きているか。特に今はリーダーの役割もしているので、自分なりのまとめ方をしっかり持ってやっていきたい。『チームを勝たせるためにこいつが必要なんだ』という存在になっていきたいです」

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チャレンジを忘れない2人
 YOSKが夢に向かってひた走る一方で、ぬまは何故今回3×3.EXE PREMIERに参戦したのか。きっかけは地元にチームが生まれ、トライアウトの会場が母校の市立柏高校だったことだが、トライアウトの3日後にはチーム側から「ぜひ来てほしい」と連絡を受ける。YOSKの「選ばれた人しかコートには立てない。ぬまさんは常にチャレンジし続けてきたんだから、できるんだったらやるべきだと思う」という言葉もあり、LEOVISTA BB.EXE入団に至った。初めて試合にエントリーされた7月6日、ぬまは試合開始と同時にフリースタイルパフォーマンスを披露するなど、随所に“ぬまらしさ”を発揮した。

 「YOSKに『ぬまさんが魅せられればいいんじゃないの』って言われて、やっぱりやらなきゃいけないなって。やってみたら『フリースタイルで12秒は長ぇな』と思ったけどね(笑)。でも今日はシュートも入ったし、誰を相手にしてもこてんぱんにやられた感じもなかった。クォリティーは決して低くなかったと思う。外国人とマッチアップした時もフンフンディフェンス(筆者注:バスケ漫画で描かれた、ゴール下で両手を左右に大きく振る動き)で笑いも取れたから(笑)」

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 今も変わらず“勉族イズム”を体現する中、YOSK同様ぬまにも見据える将来がある。1つは街にバスケットゴールを設置する活動。「この間も小学校に1基立ててきたんだけど、このリーグは一応プロだから、その肩書を貰えただけでも活動の幅はすごく広がった」と、3×3.EXE PREMIERでプレーする恩恵を早くも実感しているようだ。そしてもう1つはやはり、自ら立ち上げた勉族への思いだ。

 「Bリーガーも多くなってきたし大学生もいるから、体力的には厳しいかなとも正直思ったんですよね。でもやっぱり一番は勉族のため。他のメンバーもそれぞれ今頑張ってるけど、一番年上の僕が頑張るなら他の奴らも頑張るに決まってるし、何か刺激になってくれればいい。あとは若いメンバーが来年勉族としてこのリーグを目指したいって言ってきて、じゃあ僕が1回挑戦してみて、それが次につながればいいなと思う」

 「昔から応援してくれてた人が観に来てくれて、『頑張ってるのを観て嬉しくて感動した』って泣いてくれたんですよ。それで昔のことも思い出せた」とぬまが言えば、「昔から一緒にやってきた人が同じリーグにいるのは嬉しいです。特にDELA(小寺裕介、ZETHREE.EXE)さんなんかは今、同じレールの上にいる。『みんなまだ頑張ってるぞ』ってあの頃の自分たちに教えてあげたいですね」と自らが歩んだ道のりに思いを馳せるのはYOSK。出会いから既に10年を超える歳月が流れ、2人は再び同じ土俵で交わることとなった。それも、UTSUNOMIYA BREX.EXEとLEOVISTA BB.EXEは同じ北日本カンファレンス。「BREXは強い。あんなのはもう先に行かせちゃえばいいよ。でも同じカンファレンスなのは運命だと思うから、マッチアップしたいね」というぬまの言葉にYOSKは「勝って恩返し」を誓った。これからも2人の道は、交差しながら長く続いていく。