3x3

バスケットの未来のために
――3×3に託すそれぞれの夢

2018年11月16日



文:吉川哲彦 写真:3×3.EXE事務局

フィナーレ

 この夏の3×3.EXE PREMIERは、現役BリーガーやかつてWリーグでプレーしていた選手が数多く名を連ねた。トップリーグ経験者のハイレベルなプレーがゲームのレベルを引き上げ、より観衆を惹きつけたことは間違いない。

 今回は、彼らがどのような思いを背負ってこの舞台に立ったのか、それぞれのサイドストーリーを紹介する。

SEKAIE 立川
立川真紗美/SEKAIE.EXE

 2004年のアテネオリンピックに出場した立川真紗美は、5人制引退後に3×3でも日本代表を経験。今回の女子カテゴリー創設に際してはSEKAIE.EXEでプレー。チームは6チーム中5位に終わったが、自身は得点ランキング2位と貫禄を示した。

 5人制と3×3の両方で代表歴があるとなれば、2年後のTOKYO出場にも期待したいところ。両方でのオリンピック出場はバスケット界の垣根を越えて話題になるだろう。立川自身は、その野望をどれくらい持っているのか。

 「アテネの時と違うのは、仕事との両立の中でプレーしているということ。5人制の時と違って24時間すべてをバスケットに使えない状況で、目指すということはハッキリとは言えない。やっぱり出たいですよ。ただ、出るにはそれなりの資格がいる。今の自分が出るにふさわしい人間かというと難しいなって、プレーしているからこそ思います」

 日本代表という肩書きの重みを、身をもって知っているだけに、「オリンピックを目指す」と軽々しく口にはしない。それでも、プレーの随所に負けず嫌いな性分をのぞかせる立川は、湧き上がる思いにフタをすることもしない。

 「今本当に楽しくなってきちゃってるんですよね。スクールで教えている子どもたちに夢を与えるためにも両立することが一番だと思っていたんですけど、いざやってみたらプレーに専念したいと思い始めている。だからといって現状は3×3だけで生活していけるわけではないので、少しでもオリンピックに出たいと思うならいよいよ本気で考え直して、目指すべく環境を自分で整えないといけないのかなって。誰にも負けたくないと思えているうちは目指すべきなんじゃないかという思いが、あつかましくも出てきちゃいました(笑)。ちょっとスイッチ入っちゃいましたね」

SANKAK 岡田
岡田真央/SANKAK.EXE

 その一方で、トップリーグ出身でもオリンピックにはこだわりを見せない選手もいる。岡田麻央(SANKAK.EXE)は「やるからにはトップを目指すのが当然」と前置きしつつ「オリンピックを目指しているというわけではない」と語る。

 「選手として出られるならそりゃもちろん出たいです。でも、自分ができる中での最高を目指していきたいし、このリーグでプレーすることでオリンピックを盛り上げられればという気持ちが強いです。私はちょっとした芸能系の仕事もしていて、そういうことをできる選手は今のところ私だけ。そこでできることがあると思います」

 岡田はレポーター業などでメディア露出が多く、彼女でなければできないことも少なくないだろう。そして岡田には、国際競争力に反比例するように男子より認知度の低い女子バスケット界を変えたい思いもある。

 「Wリーグは企業スポーツなので限界があるんですけど、3×3は一応プロだからやりたいようにできるといえばできる。まだできたばかりのリーグで緩い部分もあるんですけど、伸びしろはこっちのほうがあるかなと思います」

SUNS 根岸
根岸夢/SUNS.EXE

 湘南サンズに加わった理由を「『1回だけ試合に出よう』って桂(葵)さんに騙されて(笑)」と語る根岸夢も、オリンピック出場には重きを置いていない。優秀選手に選ばれる活躍で早稲田大のインカレ優勝に貢献しながらも、「何年かプレーした後に就職したり結婚したりっていう『先が見える』のが嫌で」とWリーグチームからのオファーを断った根岸。チームがSUNS.EXEとして3×3.EXE PREMIERに参戦したことで表舞台に戻ってきた格好だ。そんな彼女は、3×3.EXE PREMIERが閉幕してすぐにニュージーランドに渡り、留学生活をスタートさせた。彼女もまた岡田同様に、違った角度からバスケット界に貢献したい意欲を持つ。

 「ここまで携わらせてもらっているのは本当にありがたい。5人制の代表に同期が何人かいるんですけど、私がプレーしていることで彼女たちも3×3に興味を持ってくれているのは嬉しいです。でも自分がオリンピックでプレーするのはまったく興味なくて……。リーグの中に入ってみると、プレーする環境はまだまだだと感じるので、留学も含めてすべての経験を今後の3×3の発展のために活かしたいと思っています。みんながプレーできる場所をつくって、そこで活躍する姿を見たいなって」

TOKYO DIME 鈴木
鈴木慶太/TOKYO DIME.EXE

 男子に目を移してみると、より“世界”を意識した選手が見受けられる。“K-TA”の名でストリートボールの第一線に長く立ち続けている鈴木慶太は、3×3.EXE PREMIERも1シーズン目からTOKYO DIME.EXEでフル参戦。国際大会でも場数を踏んで手応えを得ており、39歳になる2年後のTOKYOを目指すことを明言している。かつてLEGENDやSOMECITYといったストリートボールリーグの立ち上げに深く関わってきた男を支えるのは、「前例がないことをやりたい」というパイオニア精神だ。

 「代表に選ばれれば、そこで結果を出すことがこのシーンに対する貢献になることはもちろんなんですが、今はプロサーキットでも日本で唯一海外を転戦しているので、果敢に海外挑戦して切り拓く、道を創るという誰もやっていないようなことにチャレンジしていきたいです」

 チャレンジという言葉が出てきたように、37歳の今も鈴木は常に前進する姿勢を崩さない。3×3が発展すればするほど自身の立場を脅かす選手が増えることになるが、それも鈴木は歓迎する。

 「一アスリートとして、入ってきたばかりの選手には負けられないという気持ちも当然ありますが、僕としてはB.LEAGUEの選手が入ってきたほうがめちゃめちゃ楽しい。彼らとクロスオーバーできること自体モチベーションになるし、自分のプレーでぶっ倒せたらもっと楽しいです」

TOKYO WINGS 武井
武井修志/TOKYO WINGS.EXE

 鈴木とともにLEGENDで確固たる地位を築いた“ST”こと武井修志(TOKYO WINGS.EXE)は、bjリーグやペルー等海外プロリーグでのプレー経験を持つが、2011年にロシア・ウラジオストックで開催されたパシフィックオープンという大会に参加し、鈴木や落合知也(BREX.EXE)とともに日本人として初めて3×3ルールでプレーした選手でもある。ただ、昨年3×3.EXE PREMIERに参戦した時点では3×3という競技自体に必ずしも良い印象がなかったそうだ。

 「世界で一番競技人口が多いスポーツを、わざわざこうしてカテゴライズする必要があるのかなと。でも5人制では続けられない人とか、5人制より向いている人とか、そういう人の受け皿はつくれている。僕のサイズで世界を目指すチャンスも3×3なら生みやすい」

 自身を「日本語の流暢な外国人」と表現し、「日本の5対5が一番合わない」と言い切る武井は、ただ自身のためのみならず今後の日本人選手があるべき姿も考え、そのために3×3に取り組んでいるところがある。

 「外に向かって日本人がどう戦うのかというのを形にすることがライフワーク。その刺激や熱を子どもたちにも当ててあげて、日本では起こし得ない化学反応を起こしたい。渡邊雄太君のような選手が現われるのをただ待つのは消極的すぎると思うんです」

TACHIKAWA 渡邉
渡邉拓馬/TACHIKAWA DICE.EXE

 最後に、3×3 PREMIERに現れた過去最大級のビッグネームを取り上げないわけにはいかない。日本代表を含めて長く5人制の最前線で戦い、現在はアルバルク東京でGM補佐を務める渡邉拓馬だ。アリーナ立川立飛をホームアリーナとしているA東京がTACHIKAWA DICE.EXEとも協定を結んでいる中、「何か地域に貢献できることはないかと考えた時に、3×3にアルバルクの選手が出られない代わりに僕が出て、いろんなところで架け橋になれれば」と参戦を決意した。

 40歳になる年に現役復帰したことについて、「最初のほうはケガもしていたので不安はあった」と言うものの、「自分の経験は全部活かせますね。個人スキルもそうですし、3対3の攻め方やスペーシングも5人制と同じ」と自信はあったという。その一方で、1カ月半ほどの参戦で得たものも多かったと語る。

 「まだワクワクできるんだという驚きがありました。モチベーションがゼロになって引退したので、ステージは違いますがこうしてエナジーを出してプレーできて、自分にもまだ眠っているものがあったんだなと。アルバルクでもDICE.EXEでも日本一になって“優勝請負人”なんて言ってくれる人もいますが(笑)、誰かがそういうことを思ってくれたりいつもと違うことを感じてくれるきっかけになればと思います。また、3×3もいろんなスキルが必要で、それがいかに大事かということを少なからず自分のプレーで子どもたちに伝えることもできたんじゃないかと思います」

 3×3.EXE PREMIER閉幕後には、矢野良子が自ら新たに3W(トリプルダブル)というリーグをスタートさせた。3×3やバスケット界全体の発展のため、選手たちは持てる力を惜しみなく注ぎ続けている。