3x3

2020TOKYOへ
3×3は世界への扉を開けるか

2018年10月10日



文:吉川哲彦/写真提供:3×3.EXE事務局

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 3×3.EXE PREMIERは、9月16日のファイナルをもって5シーズン目の幕を閉じた。昨シーズンの18チームから一気に36チームまで拡大したことに伴い、B.LEAGUEからも多くの現役選手が参戦するようになり、昨季まで信州ブレイブウォリアーズでプレーしていた齋藤洋介のように、5人制のプロ選手としての地位を投げうって完全転向する者まで現われた。さらに世界初となる女子カテゴリーも創設され、正式種目に採用された2020年の東京オリンピックに向けて着々と強化・普及の歩みを進めている。2年後までにどれだけ“世界”に近づけるのか。今回はその可能性を探るべく、3×3.EXE PREMIERでプレーする選手の声を集めた。それぞれがどのような思いで参戦しているかという点も含め、2回に分けてお伝えしたい。

 まずは3×3という競技の特性を見てみよう。ハーフコート、10分という短い試合時間、12秒のショットクロックが5人制との大きな違いであり、「5人制とは別の競技」という声もよく聞かれる。ゆっくりボールをフロントコートに運ぶことができず、シュートが決まった後も基本的にインプレーとなるためディフェンスに移行する選手も相手から距離を置くことができない。それゆえ展開は必然的に速くなる。5人制で高いレベルでプレーしていた選手ほど、アジャストが難しいようだ。

 「5人制は要領よくやれば休める時もあるんですけど、3×3は本当に休む暇がなく、『10分ってこんなに長いのか』と思う。別のスポーツとして考えなきゃいけない」(岡田真央/SANKAK.EXE)

SANKAK 岡田真央
岡田真央/SANKAK.EXE

 「私が求められているのは2ポイントを打つことなんですけど、とにかくボールを持ったら打つ、持ったら打つという感じ。5人制でも私は打つほうだったんですけど、その私の感覚以上に打つことを求められる。ワンテンポ置くとかペースダウンもできないので、そこがまだ慣れていないところです」(瀬﨑理奈/TOKYO DIME.EXE)

TOKYO DIME 瀬崎里奈
瀬﨑理奈/TOKYO DIME.EXE

 また、3×3はコーチがベンチに入ることができないため、ロスターに入った4人が戦術や交代のタイミングなどをすべて自分たちで考えなければならない。練習を重ね、選手間でコミュニケーションを取ることが非常に重要となるが、現状ではどのチームもそれが不十分だという。

 「5人制は個々の役割がはっきり決まっていて、私はディフェンダーとして代表にも呼んでもらったんですけど、3×3は誰かが何かだけやっていればいいわけではなく、コーチもいないので自分たちで判断しなきゃいけないし、完全なる客観視ができない。そこが難しいところであり、面白いところでもあります」(立川真紗美/SEKAIE.EXE)

SEKAIE 立川
立川真紗美/SEKAIE.EXE

 「競っていたり負けている時も普段から練習をやってコミュニケーションが取れていれば対応できるし、そこの差は5人制よりも試合に影響が出やすい。うちはまったく練習に集まれていなくて、それで競った試合に負けてしまうことが多いです」(夏 達維/OSAKA DIME.EXE)

OSAKA DIME 夏
夏 達維/OSAKA DIME.EXE

 その中で重要になってくるのが状況判断力。これは、今回話を聞いた選手ほぼ全員がキーポイントとして挙げたことだ。5人制の試合でも状況判断に優れた選手が試合の行方を左右するのだが、試合時間もショットクロックも短い3×3では小さな判断ミスがより勝敗に大きな影響を与える。女子ではTACHIKAWA DICE.EXEが他チームの選手からもその点で高い評価を受けたが、男子で同様の強みを見せたのが長谷川誠をテクニカルアドバイザーに迎えたSEKAIE.EXEだ。

 「大事なのは頭の切り替えで、一瞬の判断基準が低いと勝てない。いくら大きい外国人選手がいても、状況判断ができないと戦力にならないです。僕たちは長谷川さんの指導で判断基準を高める練習をオフェンスもディフェンスも徹底してやってきて、それが結果に表れたのは間違いないです」(飯島康夫/SEKAIE.EXE)

SEKAIE 飯島
飯島康夫/SEKAIE.EXE

 前述したように男子が36チームに拡大し、女子カテゴリーも創設されたことで、5人制トップリーグ経験者の参戦が例年以上に多かった点が今年の3×3.EXE PREMIERの大きな特徴。かつてbjリーグ東京アパッチや京都ハンナリーズ、アメリカ独立リーグなどでプレーしていた岩佐 潤(SEALS.EXE)もその1人。近年は指導する側にシフトしていたが、教え子である野呂竜比人が参戦したことが自身の3×3参戦の契機になった。

 「本人がもがく中でどういうアドバイスをすればいいのか、外から見ているだけでなく自分がその中に入ってやってみないとわからないと感じたんです。本当は一昨年からやろうと思っていたんですがケガしてしまって昨年からになった。でもそれでSEALSと出合えて逆に良かったのかなと思います」(岩佐 潤/SEALS.EXE)

SEALS 岩佐
岩佐 潤/SEALS.EXE

 岩佐の場合は特にbjリーグの舞台を踏んできたことで、今の3×3.EXE PREMIERが抱える課題も明確に認識し、危機感が必要だと説く。

 「bjも最初はひよっ子みたいなリーグだった。審判、選手の質、全体を取り仕切るオーガナイズの部分も手探りでやってきて、それでも最後は本当に良いものができたと思うんです。3×3も、ただのブームとかオリンピックのためだけに盛り上がるのでは大したことないと思われてしまう。選手にもリーグの運営にも、もっとプロ意識が生まれないといけないと思いますね」

 選手は一般の社会人が多く、B.LEAGUEの現役選手以外は完全なプロ選手ではない。リーグ自体はプロの体裁を取っているものの、肝心の選手は3×3で生活を成り立たせている例は皆無と言ってよく、岩佐の言う「プロ意識」を備える上で十分な環境とは言えないのも確かだ。しかし、つくばロボッツ(現・茨城ロボッツ)などでプロキャリアを積んだ夏の意見には、どの選手も耳を傾けなければならない。

 「他に本業を持っている選手が多いので、今はどうしてもセミプロ的なところはあると思うんです。でも、コートに出て人前に出たら、特に子どもたちから見ればプロなんですよ。上手い下手よりも、プロとしての立ち振る舞いが大事。商業施設で試合をして、控室に戻る時も見られているんです。そういう意識を持ってやっていけば、自然と『選手がカッコいい』とか『バスケ観に行こう』となるんじゃないかと思います」

 環境の整備やプロ意識の向上が必要とされるのは、岩佐が指摘したように単にリーグが盛り上がるためだけのものではない。日本が世界で通用するレベルに到達する上で土台となるのがその部分なのだ。その中で一番近い目標が2年後の東京五輪ということになるが、TOKYO DIME.EXEの森本由樹によれば「5人制の代表に残れなかった選手が3×3に回ってくる可能性がある」とのこと。しかし、冒頭の「5人制とは別の競技」という観点で考えると、今3×3を主戦場としている選手にも意地がある。

 「せっかくこういうリーグができたので、切磋琢磨して5人制に負けず劣らずのレベルにしていければ一番盛り上がる。最終的に5人制のほうから選ばれたら自分たちが積み上げたものをかっさらわれる感じもするので、JBAにも認めてもらえるようにレベルを上げていきたいです」(森本)

 「もともと3×3をやっていたり、ストリートを盛り上げてきた選手のほうがより目立っていかなきゃいけないと思います。古くからそういう舞台に関わってきた人の想いを僕は引き継いでいるつもりなので、その土俵を守るためにも負けられない」(飯島)

 選手もリーグ全体もレベルアップが必要なのは、5人制も3×3も同じ。バスケット界全体の発展のためにも、3×3.EXE PREMIERが果たすべき役割は大きい。