「チームのまとまりが”大きく”なっている」
B2優勝へ自信を持って指揮を執る桶谷HC

2020年11月19日



文:川西祐介/写真:B.LEAGUE

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 仙台89ERSを率いて、今季で3シーズン目となる桶谷大ヘッドコーチ。bjリーグの大分ヒートデビルズ(現・愛媛オレンジバイキングス)を皮切りに、琉球ゴールデンキングスでは2度のリーグ優勝、その後率いた岩手ビッグブルズではレギュラーシーズン19連勝とチーム初のファイナル4進出を達成。bjリーグ最終シーズンからBリーグ開幕2シーズンは大阪エヴェッサで指揮を執るなど、指導歴は長く、結果も残している。

 2018-19シーズンの仙台ヘッドコーチ就任時、「三顧の礼をもって迎え入れてもらった」と語った桶谷HC。そんな礼を尽くしてくれたチームの強化・編成については、同じシーズンにGMに就任したミスターナイナーズの志村雄彦との二人三脚であたってきた。

 最初のシーズンの序盤、2人に話を訊いた時に口を揃えて話してくれたのが、「5年後にB1で優勝するチーム」を作るということ。B2で優勝するだけでなく、B1に定着し、そこでも勝てるチームとなることを目指しているのだ。そのために、岩手で桶谷HCの薫陶を受け、桶谷バスケをよく知る月野雅人を迎え入れて、桶谷イズムをチームに浸透させる役割を担ってもらった。そして、桶谷HCは、大阪から一緒に移ってきた澤邉圭太や、志村GM(当時)から「信じてほしい」と託された白戸大聖や新号健ら若手を成長させ、月野らベテランと融合させることで、チームを強化してきたのだ。

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 2018-19シーズンは当時4枠だったB2プレーオフの出場権を勝ち取ることができなかった。昨季は東地区で群馬クレインサンダーズと1ゲーム差で地区首位を争っている中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりシーズンが中断。仙台史上最高勝率で東地区優勝を決めたものの、中地区優勝の信州ブレイブウォリアーズと西地区優勝の広島ドラゴンフライズには一歩およばず、B2にとどまることとなった。

 そして、今季を前にした今年4月、桶谷HCは契約を1年更新した。複数年ではなく1年としたのは、「3年かけてB1に行けないのであれば、チームから去ったほうがいい」との思いがあったためだ。しかし、「絶対にB1に上げる。その気持ちのほうが強い」と続け、チームの成長と強さに手応えを感じていることも示してくれた。しかし、その後の7月、志村がクラブ社長に就任すると、桶谷HCGMを兼任することになった。

 そんな、ヘッドコーチとGMという重責を兼任して戦いに臨む桶谷HCに、今季のゲームのおよそ2割を消化した時点で、自身が組んだロスターと、チームの手応えについて話を訊くことができた。

――ヘッドコーチとGMというのは、チームづくりにおいて、それぞれが重責をともなう仕事だと思うのですが、兼任することに難しさはありませんか?

「チームづくりの予算という部分もGMとして大切な仕事ではあるのですが、そういった部分は、志村社長と渡辺副会長に助けてもらっています。そのおかげで僕は、選手だったりスタッフだったりという人事面に重点を置くことができています。予算の範囲内で、お金を使いたいポジション、少し控えても大丈夫なポジションを考える。そうして出した僕の意見を、チームが尊重してくれるので、よりやりやすくなったと思っています」

――チームづくりにおいては、昨季までは志村さんと相談することが多かったと思います。

「お互いに意見を出し合うというのはこれまでと一緒です。ただし、志村も社長業で忙しくなっているので、より僕のほうが選手を見ることが多くはなっていますね」

――そんな中で、昨季までチームの中心選手となっていた、白戸選手や新号選手が抜け、新たに笹倉怜寿選手が加入しました。渡辺翔太選手も成長を感じさせています。とくに笹倉選手は登録のPGというよりは、SGSFとしても振る舞うことが多いですね。

「もちろんPGというポジションは大切な仕事です。その中で、今季のチームづくりにおいては、よりボールハンドラーを増やすということに力を入れています。ですから、怜寿がボールを持ってくれば彼がPGになるし、もちろん月野が運べば怜寿がウイングになる。誰かが必ずPGをやるっていうのは決めていなくて、だから怜寿はPGからSFまでやるっていう感じですね」

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――そういうバスケが今は主流にある、ということですね。

「そうですね。それこそ宇都宮ブレックスは全員ボールハンドラーで、全員PGになれる。ボールへのプレッシャーがディフェンスで重要視されているいま、コート上に2人ボールハンドラーがいないとゲームにならない。僕らのチームもハンドラーが1人という時間帯があると、そこにプレッシャーをかけられてターンオーバーをしてしまう。そういう意味で、怜寿の存在は僕らにとって大きいですね。月野の横に置いておけば、月野がプレッシャーを受けても代わりに怜寿がプッシュできる。もちろん、役割を逆にもできますしね。それを見た相手チームは、2人にディナイして他の選手に運ばせようとしてきます。でも、うちにはさらに澤邉がいたり渡辺がいる。こんなふうに、徐々にハンドラーを増やしていっているところで、ここが今季僕らの強みになってくるかなと思いますね」

――それが桶谷HCの目指すチームということですね。

「志村と話しながらですね。PGについては、志村が僕よりも知っている。彼と話すことで、ボールハンドラーが絶対に必要だなと」

――昨季シックスマンでありながら、日本人選手トップの平均得点をあげていた澤邉選手が、今季もベンチからチームを支えています。

「僕はあまりスターターとベンチを気にしてはいないんです。澤邉もPGからSFまでできる。それもうちの強み。澤邉をシックスマンで出して、好きなところでプレーさせる。それから、次に必要な選手を出していく感じですね。渡辺なのか、金城茂之なのか寒竹隼人なのか。ヘッドコーチとしては、ピースを埋めていくだけですね」

――澤邉選手は試合の流れによってベンチから出ていく時の役割が変わるということですね。

「ぜんぜんあります。澤邉がPGに入ることも多々あります」

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――ユーティリティにプレーできる選手が多い。

「そういうことです。ですから逆に、エースがいない。先日の熊本ヴォルターズとの試合(10/18@ゼビオアリーナ仙台 65-67で敗戦)のように、最後に誰がいくのかってなることもありました。でも、今日のアースフレンズ東京Zとの試合(10/24@世田谷区立総合運動場体育館 64-82で勝利)のように、全員が責任を持って俺がやるってできるようになれば、勝てる。今日は前節(熊本戦)の負け方のバウンスバックとしてはすごく良かった。チームとしていい経験できました」

――今季は先ほど名前が上がった寒竹選手やジョシュ・ペッパーズ選手らベテランが加わりました。鎌田裕也選手は中堅ですかね。

「一応30歳なんで、裕也は『中堅です』って言うんですけど(笑)。やっぱり、若手だけでなく、ベテランの力も必要。日本人選手、外国籍選手含めて年齢のバランスがホントにいい。いいメンターがいるということが、若い選手が気持ちよくプレーできる要因になっているかなと思いますね」

――チームとしてのまとまりは昨季よりもいい感じですね。

「まとまりがいいだけではなくて、そのまとまりがすごく大きなものになっていると僕には見えます。これまで『なにかピースが足りないな』っていうところが、ハマってきている。B2で優勝できる自信が大きくなっています」

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――チームの現状に手応えを感じていらっしゃるんですね?

「今日みたいに前半相手にリードを許しても、我慢強く冷静にハードにプレーできれば、最後は試合に勝つことができる。こういう戦い方ができると、相手チームはうちに勝つのは難しいと思いますよ」

――何度リードされてもカムバックしてくる。相手チームにしたら、嫌な感じかもしれませんね(笑)

「嫌な感じだと思いますよ(笑)。僕も相手が仙台だったら、どうやって勝ったらいいか……難しい。って、自分のチームをこんなに褒めてもなにも出てこないんですけど(笑)」

 仙台を今季必ずB1へ上げると覚悟をもって臨む桶谷HC。シーズンはまだ序盤だが、今のチーム状態に手応えを感じているのは確か。3度目の正直となるか。

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