スペインバスケに学び、深める
佐賀バルーナーズ、保田尭之AC

2020年03月04日



文:hangtime編集部/写真:佐賀バルーナーズ

hungtime8 (3)

   今シーズンからB3リーグに参入した佐賀バルーナーズ。ロスターには昨シーズン、B2の熊本ヴォルターズでプレーした並里祐やバンビシャス奈良に所属していた小松秀平、同じく奈良でトリプルダブルを記録したゲイリー・ハミルトンら力のある選手の名前がある。チームの指揮を執るのはスペイン代表のアシスタントコーチ、ルイス・ギル・トレースヘッドコーチで、いきなり優勝候補に挙がるほど充実のラインナップだ。

 しかしながら、すぐに結果が出せるほど甘くはない。ケガ人にも悩まされ、なかなか思うような結果を得られないでいた。しかし、レギュラーシーズンも中盤を過ぎると歯車が噛み合い、着実に勝星を増やした。現在は新型コロナウィルスの感染流行を受け、中断されているリーグだが2月24日時点で30勝10敗で首位をキープ。今後のことは何とも言えないが、B2昇格へのチャンスを確実にものにしたいところだ。

 先日チームを支えるベンチスタッフの1人、保田尭之アシスタントコーチに話を聞いた(2月24日、ベルテックス静岡戦終了後)。昨シーズン、熊本を率いてB2西地区を制し、B1昇格こそ逃したものの、高い評価を受けている若手コーチの1人である。以前、誌面(Issue 010)で取り上げた通り、単身スペインに行き「スペインバスケ」の習得に努めている。今回のスタッフ入りは、「キャリアアップに大いにプラス」と、その意気込みが伝わってきた。

A07I1092

スペインバスケの“リアル”に触れる
──ヘッドコーチを経験した翌年、新しい環境でアシスタントコーチに就くという決断をしましたが、どういう思いからだったのでしょうか。
 「複数のオファーの中から佐賀を選んだのは、ルイスHCの下、将来的な目標のひとつにしている『スペインリーグ』につながる経験ができると考えたからです。今はディフェンスを任されていて、フェルナンド・カレロ・ヒルACがオフェンスを担当します。ルイスHC自身、スペイン代表でディフェンスをフォローするコーチですが、その彼の下でディフェンスをやらせてもらえるのはとても勉強になる。昨シーズンは熊本で、オフェンス面で結果が残せた部分があったと感じていますが、今度はディフェンスを学ぶ機会です。世界トップレベルのコンセプトを共有しながら、ディフェンス面を自分がリードしていくこともあるでしょう。将来もう一度、ヘッドコーチとして指揮を執る機会があれば、攻守両面でアグレッシブなチームづくりができるんじゃないかと考えると楽しみでなりません」

──ルイスHC一緒に働いて、「さすがだな、違うな」というのはどんな場面で感じますか?
 「彼と初めて会った時……ある程度、戦術やドリルなどは知っている(経験している)つもりでいましたが……彼とは話すだけで、まだまだ知らないことが多いと痛感させられました。最新のトレンドを取り入れ、実践していますし、“将来を読みながら”バスケに関われるのが楽しくてしょうがない。とても恵まれた環境だと思っています」

──ルイスHCが佐賀でやろうとしているのは、どういうバスケットなんでしょうか?
 「戦術的なことで言えば、スペイン代表が昨年のワールドカップで優勝した瞬間に用いていた戦術を取り入れています。彼が直接関わっていたからこそできることで、それを日本人選手にアジャストさせながら、今できる範囲のことをやっていこうとしているんです」

──保田ACとしては、熊本でのヘッドコーチ経験がありますが、佐賀でさらに成長し、その先にはスペインでのコーチングという目標があるんですね。
 「学生時代からの目標ですし、いずれ実現できればいいなと。そう考えた時、今シーズンは、ここ(佐賀)に身を投じていることが重要です。B.LEAGUEも年々外国人コーチが増えて、凄いキャリアの持ち主がベンチにいます。自分が指揮を執り、彼らと対戦することで得るものはあるでしょう。でも、今はそうではなくて、世界レベルのコーチの下でコーチングを学んでいく。そうしなければ今後、B.LEAGUEであれ、他のリーグであれ、ヘッドコーチとして戦っていくことはできないでしょうし、海外でキャリアを積むことも難しいかもしれません。ここでの経験によって、その後見えてくるコーチ人生は大きく変わると思います。まだそのステップを十分踏めているわけではありませんし、頭の中のストーリーでしかありませんから。先々を見据えた場合、今は佐賀での仕事を遂行するため、一所懸命に取り組むことが重要だと確信しています」

hungtime9 (2)

今できることを、未来につなげる
──このチームで、アシスタントコーチとしてサポートできること、していきたいと考えていることを教えてください。
 「ルイスHCとクラブからは、世界のバスケットを学ぶ機会を得ています。実践的に学べる環境は本当にありがたいことです。彼は日本が初めてですから、これまでの僕の経験を総動員して、ルイスHCにとっても、クラブにとっても最高の結果を残せるよう、しっかりと役目を果たしたいと思います。ルイスHCには日本のバスケットの事情や選手たちのことを伝えていきたいですし、その部分ではルイスHCも僕を上手く使うというか、信頼してくださっていますから、その期待に応えたいですね。それと竹原哲平社長はリスペクトできる人物で、彼がやろうとしているプロジェクトに対して全面的に協力していきたいと思っています。というのも、熊本地震の後、当時26歳でチームの指揮を執ることになりました。右も左もわからない中、ヴォルターズの西井辰朗GMや清水良規HC(当時)など、たくさんの方々に助けていただきました。今度は自分が何かお返しできることがあるんじゃないか、そういう気持ちが強いんです」

──いよいよ首位に立ちました。一時期の低迷から回復できた要因をどう考えていますか。
 「ケガ人が多く出たというのが低迷の理由で、その問題が解消されてきたことが挙げられます。常にシーズンを通してリクルートを行っていて、渋田怜音であったり、エバン・イエーツらを迎え入れることができました。外国籍選手によってインサイドが強固になったというのもあるでしょう。自分たちがやるべきことをやりながら、失敗や成功を繰り返し、勝星を積み重ねながら、“成功のイメージ”が大半を占めるようになってきた。そのことが好結果につながっているのではないでしょうか」

──勝つことで成長し、選手が自信を深めていく。成功体験がプラス材料になっているんですね。
 「そうです。ただ、僕が思っていた以上に早く首位に立ったなという印象です。昨シーズン指揮を執っていた熊本では最後の最後で島根スサノオマジックに連勝し、どんでん返しで西地区チャンピオンになりました。ここで首位に立つと、これからは追いかけられる立場になりますから、このまま逃げ切るのはそう簡単ではないと覚悟しています」

hungtime2 (2)

──ルイスHCをサポートしてきたわけですが、一流のHCと言えども苦しい場面もあったと思います。保田ACの立場から見ていていかがでしたか?
 「クラブも試行錯誤しながらですし、ルイスHCも慣れ親しんだ土地ではないですから、苦しかったはずです。指導やリクルートなど、すべてにおいて日本のこと、日本人のことを理解しなければなりません。日本人選手は欧米の選手とは考え方や行動など、大きく異なると思います。その点では頼ってもらえたと感じていますし、リクルートなどは昨シーズンの経験が強みになりました。ルイスHCは人を使うのが上手いと思いますし、使われることでやりがいを感じます。彼のバスケットのために尽力しよう、クラブ全体で成長しようという好循環が佐賀にはあると思います」

──保田ACの存在を活かしているわけですね。
 「もともと伝えられていた部分ですが、自分の仕事が明確で、とても仕事がしやすいんです。まだまだ足りないところがありますから、そこはルイスHC自身の姿を見て参考にしています。というのも、スペイン代表のアシスタントコーチとしてベンチにいる彼の映像を見ながら、『そうか、こういうことを求めているんだ』というのが理解できるんです。彼が身近にいても、映像を通してでも、常にモチベーションを高く維持することができる。これからのことを考えるだけで楽しみですし、成長した姿を見せることが、彼にもクラブにも恩返しになります。応援してくださるファンのみなさんも望む結果を手に入れられるよう精一杯頑張ります!」