東京EXの“バスケ小僧”宮田 諭
「コートに立つ日常」を続けたい

2020年02月20日



文:hangtime編集部/写真:B.LEAGUE

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 1978年生まれの42歳、宮田諭は早稲田大学卒業後、大手電機メーカーのNECに就職し、社会人生活をスタートさせた。だが、2年後には退社を決意し、アメリカへと旅立った。理由は“バスケがしたい”から。

 何とかなるだろうという、ノープランでの渡米だったが、結果、マイナーリーグでプレーする機会を得た。さらに、ひょんなことからトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)の関係者に見出され、2005年から5シーズンを国内トップリーグでプレーすることに。リーグ優勝を経験するなど、“バスケがしたい”という想いは成就したようにも思える。

 以前、「遅咲きのバスケキャリア……」と言いかけると、即座に“まだ咲いてませんから”と笑顔で返された。彼は咲くことが目標ではなく、ただ“バスケがしたい”のだ。

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 トヨタ自動車のチームを離れてからは、自らも立ち上げに関わった東京エクセレンスでプレーを続け、2013-14よりNBDLにプロチームとして参戦。3連覇を果たした後、B.LEAGUE初年度をB2で迎える。翌2017-18から2シーズンはライセンスの問題でB3リーグへの降格を余儀なくされたが、今シーズン、再びB2の舞台に戻ってきた。

 東京EXの戦績は、19勝22敗で中地区4位。プレーオフ進出に向けて負けられない試合が続く。ビジネスパーソンとして活躍しながらチームの要職に就き、さらにロスターに名を連ねてコートに立ち続ける宮田は1人で何役もこなす。この日は第22節、香川ファイブアローズとのGAME2で、前日は逆転負けを喫したが97‐75で快勝した(2020/2/8)。

バスケがある日常を続けたい
──今シーズン、コンディションはいかがでしょうか? 3シーズンぶりのB2ですが、意識を変えよう、こういう準備しようと思ったことはありますか?
 「誰も一緒だと思いますが、(ここまで来れば)どこか痛いところがあると思います。まぁ、試合に出られているので、そう言う意味では“元気です!”というか、プレーできることが、一番のモチベーションですから。B2だからといって、何かを変えるとか、そういうのはまったくないですね」

──「いつもの宮田で臨む」ということですね。
 「チームの方針としてウチは若手がスタートで出ていって、ベテランはベンチからスタートしてもきちっと仕事をしましょう、というのがスタイル。役割的にはもう決まっていますし、ここ数年も変わりなく継続しています。メンバーもあまり変わっていないので、やることは変わりません」

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──B2で再チャレンジする中、現在の勝星や順位はどのように感じていますか?
 「正直、もったいない負け方をしてしまったり、取りこぼした試合があったり……本当は勝率6割ぐらいをキープしてプレーオフ圏内に、というのが本音なんですけど、あらためてバスケットの難しさを感じています。B3であれば力でねじ伏せられたところもあったんですけど、B2だとそう簡単にはいきません。流れをつかみ損ねたら、もうそれで終わってしまう。相手がオンワン(外国籍選手1人)だろうが、それは関係ない。『もったいない』とは言いつつ、勝てないのはそれが実力なので、やはり僕たちはまだそのレベルなのかなって」

──丹野(合気)選手がケガで戦列を離れ、ポイントガードが田口(暖)選手と2人になりました。PGとして、さらに上に行くには「ここが足りない」「もう少しこうしなければ」というのがあれば教えてください。
 「丹野、ライアン(・ステファン)、(ジョーダン・)フェイゾンが点を取るというのがエクセレンスのスタイルだと感じられるかもしれません。ただ、それですごく勝てていたかというとそうではなくて、この3人が調子を落としたり、ファウルトラブルになることもある。そういう状況でも試合に勝つというのは、結局まんべんなくみんながステップアップした時なんです。PGとしては、オプション的にシュートが当たっている選手がいてくれたほうがいいのはいいんですが、得点力のある選手が活躍するというより、チーム全体でエネルギーを出せているかどうかが勝敗につながると思っています。一時、もう本当にオフェンスが停滞したことがあって、3Pシュートの確率が30%を切っている状況がありしました。最近は佐野(隆司)や上松(大輝)らが少しずつ確率を上げていますから、結局は一人ひとりが自分の仕事をこなせるかどうかが重要なんだと思います。なので、誰かがいるいないは気にしません」

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──「自分が何とかしなきゃ」という、変な気負いはないわけですね。
 「ないですね、あまりそう感じたことはない(笑)。その時いるメンバーが頑張ってやる。(PGが)3人いればコーチングスタッフは安心感があるでしょう。だけど、2人になったらなったで、ファウルやケガに気をつけるというのはありますが、田口は年々本当に良くなっています。3シーズン前にB2でプレーしていた時は、あんなにドリブルが上手いのにボールを運ぶのを嫌がるようなことがありました。そこは気持ちの面でやられていたんだと思いますが、3年かけて良い経験を積み、今ももう普通にボールをプッシュし、点も取ります。コーチ陣が辛抱強く起用して、少しずつ向上してきました。それでも迷いがあって、『どうしよう?』となったら、“今は一緒にこれをやろう”とか“今はあいつが調子いいからボールを預けよう”とか話しています。できるだけにシンプルに伝え、彼らしく思い切りプレーできるようにと意識しています。負けるのも含めて経験ですから、あまりプレッシャーを感じないでプレーして欲しい。まだ23歳ですからね」

──ご自身が23歳の時は?
 「23歳の時はまだ学生をやっていて5年生。バスケはクラブチームで遊んでいましたし(笑)」

──その後のキャリアは前述の通りですが、“バスケ・ファースト”のキャリアを続けているんですね。気持ちはずっと“バスケ小僧”のまま(笑)
 「変わらないですね。少しくらい痛いところがあってもプレーしたい。たぶん今シーズンは一度も練習を休んでいませんし、仕事そっちのけで練習に行っているので。バスケの練習ができないと、生活の中にストレスが溜まってしまう」

──今シーズンは全試合出場を果たしそうな勢いです。目指すところは「コート上でプレーする」ことですよね。
 「ただ、試合に出るために練習の強度をコントロールするとか、プレータイムが長かったから練習時間をセーブするというようなことはしたくない。若手と同じメニューをこなして、試合も求められるプレータイムで頑張りたいんです。結果的に全試合出場を目指すことになりますし、やっぱり“出たい!”。スタッツは気にしないんですが、今は1試合平均18分ぐらいなので、足りないですね。得点やアシストの数字はどうでもいいので、コートに立っていたい(笑)」

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「正念場」でこそできる経験
──各地区上位2位+ワイルドカード2枠のプレーオフ進出争いが熾烈になってきました。
 「勝ち方も負け方も40回試合をしてわかっているので。流れが悪い時はターンオーバーを繰り返して、単発の3Pシュートを打って負けていますから、どれだけ我慢できるか。我慢したら勝てるというのを、何度も何度も経験し、我慢できなければ負けるというのも何度も経験しています。ここからの残り試合でどれだけ我慢できるかが大事なんです。1つも落とせませんから、逆にそのプレッシャー、プレーオフをかけて戦う緊張感を経験できるんだ、と捉えています。プレーオフ進出につなげるために、残りの試合を戦えるというのは、これ以上ない経験で、だからこそ面白いんです。なかなかできる経験じゃないですからね」

──あらためて、B2で戦ってみて、どう感じていますか?
 「B2はどのチームも自分たちのカラーを持っていて、それぞれの戦い方を徹底しています。調子の良い選手に任せよう、外国籍選手にボールを預けよう、では勝てません。どこも『チームとしての戦い』を挑んでいますし、プロですからそこは徹底し、とことん追求してきます。しかも、選手の誰もが数字を残さなければなりません。残せなかったら来シーズンの居場所がないケースもありますから、危機感は違うでしょうね。1本のシュートのためにたくさん練習し、いろいろな面で節制して試合に臨んでいる。その覚悟というか、熱量は感じます。僕たちもそこは負けていられませんから、なんとか踏ん張ってプレーオフでもコートに立ちたいと思います」

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 宮田にとって、「コートに立つことが日常」なのだというのは言葉の端々から伝わってきた。取材中はずっと柔和な笑顔で、若手選手へも優しいまなざしを向けていることも十分にわかった。ただ、“まだまだ負けてられないぞ”とライバル心、向上心を持ち続けているもまた事実だろう。それは、「バスケが好き」だから。

 年齢やキャリアを重ねるごとに、自分のことだけではなく、クラブやチームのことも責任が増している。だが、コート内外でハードワークをこなす彼の身のこなしはいつも軽快そのものだ。たとえ苦しい状況であってもそれを受け入れ、柔軟かつ信念を持って対応していく姿はこれからも変わらないはずだ。正念場となる後半戦を迎え、それをどう乗り越えていこうと考えているのか。きっと、胸の内で静かに闘志をたぎらせているに違いない。