Naughty BoyからTough Guyへ
東京Zの頼れる男・増子 匠

2020年02月13日



文:hangtime編集部/写真:B.LEAGUE

photo_846356 (2)

 増子 匠のプレーを初めて見たのは彼がまだ大学生だった2014年、クラブチッタ川崎の『SOMECITY』。ストリートボールの聖地ともいえるその場所は、1on1で目の前の相手を叩きのめそうと腕ぶす、名うてのボーラーたちが集まるところだ。キャリアを積んだボーラーたちと対戦する、若手主体の「KIDROC」の中に、彼はいた。

 頑丈な体躯と高い運動能力の持ち主は、負けず嫌い。ひとたびボールを持てば何度でもゴールへアタックし、相手が怯んだスキを逃さず華麗に、かつ強引にシュートを放ってネットを揺らした。若さも武器に異彩を放つ彼のプレーに驚かされた。

 大学卒業後、一時期実業団チームに所属したがすぐに退社し、福島ファイヤーボンズ(bjリーグ)でプロデビュー。東京八王子トレインズ(NBDL)を経て、B.LEAGUEのスタートとともにアースフレンズ東京Zにやって来た。以来、東京Z一筋で、今シーズンはキャプテンを任されている。『SOMECITY』で魅せた得点感覚はそのままに、キャリアを積み上げながら、チームの牽引役へとさらなる進化を続ける。

photo_843965 (2)

キャプテンとしての苦悩
 話を訊いたのは1月26日、ホームの大田区総合体育館にFイーグルス名古屋を迎えた第19節GAME2の後。試合はオーバータイムにもつれ込んだものの71‐74で落とし、前日(64‐69)に続いての惜敗だった。

──今日のゲームでは、ここぞという場面で3Pシュートを決めました。キャプテンとしての責任感を持ってプレーしている様子が伝わってきました。
 「責任感を持ってコートに立っているんですが、チームが勝てていない分、変に考え過ぎている部分があるかもしれません。キャプテンとして“どう引っ張ればいいんだろう、どう声を掛けていけばいいんだろう”と、迷っているというか、葛藤というか……いろいろやってもまだ結果が出ていないので、どうすればいいんだろういう気持ちが強いです」

──チームの勝利が第一で、結果は悔いが残ると思います。ただ、ここで追い上げなければ、という場面でオフェンシブにプレーしていた印象ですが、それは感覚的なものでしょうか?
 「そうですね。いろいろな指導者から多くのことを学びました。昨シーズンからは、特に点を取るようになって、日本人選手のエース的な役割を任されるようになっています。そこは東頭俊典ヘッドコーチの影響が大きくて、メンタル面でのケアもしていただいています」

photo_846332 (2)

──プロ入り前は1on1が好きで、積極的に仕掛けるスタイルだったと思います。プロ入り後はディフェンスも求められますが、持ち味であるオフェンスシブなプレーを、東頭HCが認めてくれたわけですね。
 「そうですね。今のモチベーションはB1でプレーすることですし、そのためにもチームの勝利が最も大切です。個人的にプレータイムを伸ばしていますが、チームを勝たせていないので、まだ自分のイメージとしてはズレがある。そこはメンタルも含めて、もっと成長しなければなりません。チームプレーの精度を上げなければなりませんし、遂行力を求めていかなければならないと思っています。とにかく結果が出ていないのが悔しいので、自分が引っ張っていくことも大事ですが、チーム全員で目標に向かっていきたいと思います」

ディフェンスとチームプレー
 『SOMECITY』で知った彼の強烈な印象が拭えず、B.LEAGUE初年度、東京Zのロスターで名前を確認した時、少し驚いた。というのも、ディフェンス重視のチームづくりで定評のある名将・小野秀二HCが指揮を執ったから。老婆心ながら、“窮屈さ”を感じることはなかったのだろうか。

──B.LEAGUE開幕以降、ずっと東京Zに所属し、最初は小野HCで次が斎藤卓HC。そして、古田 悟HCの下でプレーをし、今シーズンから東頭HCに代わりました。自分の考え方やプレースタイルが変化していると思いますか? 窮屈に感じたことはなかった?
 「感じていないですね。小野さんに教わってから、バスケに対する自分の考え方が変わったと思います。最初は小野さんのバスケにアジャストできませんでしたが、少しずつ理解できるようになって。それは、何て表現すればいいのかな。それまでは個人のバスケにフォーカスするというか、自分がどれだけ戦えるかをメインに考えていたんです。でも、そうではなかった。小野さんのバスケを学べたお陰でディフェンスの大切さや、視野が広がっていったと感じています」

photo_846355 (2)

──これは第一印象ですが、やんちゃ坊主がバスケをしているイメージだったんです(笑)。だから「窮屈」という表現を使いましたが、自分の持ち味や特長を伸ばしていけば、プロの世界でも対応していくことができるという自信があったんですね。
 「そうです、それはあります。その意味でも小野さんや、その後のヘッドコーチの方々から学ぶことは多かったですし、ディフェンスや味方を活かすことで言えば、しっかり意識しています。というか、逆に意識しなくてもできるようになってきました。試合中、場合によってはそこを意識してプレーする時もありますけど、最近は自然とできる。それは、ヘッドコーチが求めるバスケットを理解できているからだと思います」

ケガからの復帰
 フィジルカが強く、負けん気も人一倍。パワーに勝る外国籍選手とのマッチアップでも、少々のことでは当たり負けしない。そこは自信があり、求められるところでもあるので、一歩も引くことはないが、その代償としてケガに悩まされることも多い。2017-18シーズンの12月、右膝前十字靭帯損傷、内側側副靱帯損傷の重傷を負い、約1年の戦列離脱を余儀なくされた。

photo_844021 (2)

──その間の心境はいかがでしたか?
 「シーズン当初は調子が良くても、12月頃にケガをしてしまうことが何度かありました。でも、さすがにこの時は不安でしたね。もともとケガが多いし、膝をケガしたらプロは辞めようと思っていたぐらい。元の自分には戻れないだろうと思っていたし、“膝をやっちゃうと大変だよ”っていうのも聞いていたし……怖かったですね。ケガした瞬間、もうムリかなって。その瞬間は、“絶対に戻ってやる”とは思えませんでした。戻れないと思っていました」

──少しずつ不安を払拭できたのは、仲間の励ましがあったから? それとも、以前クラブのオフィシャルサイトのコラムに書かれていた「母ちゃん」の存在?
 「なんだろう、やっぱり母ちゃんかな。大概のことは母ちゃんが絡んでいるんで(笑)。ケガした時もそうですが、いろいろケアしてくれました。優しく見守るタイプというよりは、ガンガン発破をかけるタイプ。活躍できないと『あんたショボいわね』って。活躍したら褒め言葉もありますが、それぐらい当然でしょ、みたいな(笑)。まぁ期待と心配の両方なんでしょうね」

photo_846318 (2)

 大ケガから復帰を果たした増子は今シーズン、ここまで41試合中38試合でスターターを務めている。1試合の平均プレータイムは30:15、12.7の得点アベレージで、3Pシュート成功率は32.1%(77/240)。東頭HCの信頼は揺るがず、「頼りになる男」として存在感を増している。チームは9勝32敗でB2中地区最下位と苦しい状況だが、僅差で敗れるケースも多い(2/9現在)。

 東頭HCは、「チームとしてかなり上がってきていますから、本当にもあと一歩。(厳しい状況でも)気持ちを切らさず、これだけついて来る選手というのはなかなかいないんです。コーチとして20年ぐらいのキャリアがありますが、本当にここまで頑張れる選手たちにはなかなか巡り会えません。本当にあと少しですから、勝ち星が増やせるよう頑張りたいと思います」と1月29日の試合後、終盤に向けての巻き返しを口にした。

 1つの勝星をもぎ取ることの難しさを感じながら、その壁を何とか打ち破ろうともがく増子。フォア・ザ・チームに徹し、仲間を鼓舞して粘り強く戦うタフガイは、決して諦めることはない。