B2西地区戦線に“変化”アリ
下位脱却へ奮闘するクラブ

2020年01月22日



文:大橋裕之/写真:B.LEAGUE

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“歴史を変える”と意気込むクラブ
 今シーズンはB2西地区が面白い。昨シーズン、下位に低迷した2クラブが歴史を“変える”と意気込み、それが結果として表れているからだ。それを体現するのは、香川ファイブアローズとバンビジャス奈良。前者は昨シーズン地区最下位から、現在は地区2位へジャンプアップ。後者は昨シーズン地区5位で、今シーズンは地区の順位こそ4位であるものの、プレーオフ出場のワイルドカードを争う位置につけている。

 両チームともにB.LEAGUE参入以降、一度も年間で勝ち越したことが無く、それ以前も香川は過去13シーズンで勝ち越しは創設当初のbjリーグでの3シーズンのみ。奈良に至ってはチームを創設してbjリーグに参入した2013-2014シーズン以降、勝率5割を経験したことがない。そんな負け癖を払拭しようと奮闘する彼らの戦いぶりを探ってみた。

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危機迫ったスタートが香川に与えたこと
 香川は今シーズンの開幕前に不祥事が発覚し、ヘッドコーチを交代したり、リーグから処分が科されるなど、チームは大きく揺れたかに見えた。しかし、序盤の10試合で7勝3敗とスタートダッシュに成功すると、4カ月間、連敗をせずに突き進むなど、地区首位の広島ドラゴンフライズと並ぶ、B2最多の攻撃力(平均85.5点)で、白星を23まで積み上げた。

 攻防の柱は、チーム2年目のテレンス・ウッドベリー。平均32.7点のB2トップスコアラーは、自らがボールプッシュをして速攻の先陣を切ることもあれば、ハーフコートではドライブで切り裂き、ディフェンスが寄れば味方へのアシストでチャンスメイク。B2リバウンド王のケビン・コッツァーと息のあったプレーを披露するなど、欠かせない存在だ。

 そこにFイーグルス名古屋から加入した司令塔の兒玉貴通やシューターの安部瑞基ら日本人選手もアウトサイドからゴールネットを射貫き、果敢なアタックを仕掛けるなど、内外でボールが回り始めることで、リズムが生まれていく。

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 昨シーズン、わずか19勝だった勝ち星は、昨年末に20勝(12/31群馬戦)に到達して早々に上回った。しかし彼らにとって、ここはあくまでも通過点。キャプテンを務める兒玉は「皆さんから、今年は違うねと言ってもらえることは、ありがたいことだと思います」と前置きした上で、「目標は、まずプレーオフ出場に据えています。その意味では、積み上げて当然の数字だという認識」と、表情を緩めることなく振り返った。

 またチームがマイナスからはじまったことが、かえって選手たちの気を引き締め、良い意味でマインドが『バスケットボール』へ十分にフォーカスされたようである。兒玉は、「僕らは始まりがゴタゴタしてしまったということがあって、危機感を持った状態からスタートしました。香川は、チームの歴史は長いですが、勝てない時期が長かった分、今年は絶対に“変えてやる”という気持ちで、みんな取り組んでいます」と明かす。

 さらに、そのような背景もあって、本人も移籍1年目ながら「どのシーズンも十分充実していましたが、今はバスケットに対して向き合えていると感じながらプレーできている」と、大塚商会アルファーズ(現越谷)、FE名古屋を経た、キャリアの中でも手ごたえの大きい日々を送る。

 明確な目標を設定して、もうこれ以上負けられない、ファンやブースターを裏切れない、そんな背水の陣で臨む香川。チームは今、着実に復活の道を歩んでいる。

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奈良に変化をもたらしたコーチと戦術
 
一方で、奈良は今シーズンより指揮を執るクリストファー・トーマスヘッドコーチの下、戦術を一新。攻守の切り替えが速いトランジション重視のハイペースな展開で、15勝19敗を記録。黒星は先行しているが、“Pace”と呼ばれる1試合あたりの攻撃回数の平均はリーグ2位(82.4回)、フィールドゴール試投数に至ってはリーグ1位(2,387投)を記録。その結果、平均得点も広島、香川に次ぐ、3番目のアベレージ(平均84.6点)をたたき出すなど、その成果はスタッツへと如実に反映されている。

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 司令塔の横江豊がゲームを組み立て、西裕太郎や本多純平らドライブと3Pシュートを兼備する選手と、アンドリュー・フィッツジェラルドというB2得点ランキングで2位につける大黒柱が嚙み合うと破壊力は抜群だ。横江も次のように強さを実感していた。

「やっている自分たちも、速いトランジションの中で、プレーすることがこのチームにすごく合っていると思います。要所はセットプレーもやらないといけないと思ってはいますが、トランジションで(ディフェンスが)ズレたところをアタックすることがこのチームにはフィットしている。その中でフィッツというどこからでも得点を獲れる選手がいてくれることが、デカイと思っています(昨年12/22、アースフレンズ東京Z戦後)」。

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 さらにチームに変化をもたらしたトーマスHCの存在も大きいところだ。横江曰く、「エナジーをすごくもたらしてくれるヘッドコーチ」だと言う。「全員がそれに乗っかって、ひとつの方向に向かっていっている過程にあります。すごく良い状態で、コーチのことをみんな信頼していて、プレータイムの少ない選手がいざ試合に出た時に、なにがなんでも自分の仕事をしたいという気持ちを持ってくれていますし、出ているメンバーは責任を持ってしっかりと試合運びをしないといけない」。コーチも選手も一枚岩となっていることを改めて感じさせてくれた。

 戦い方を一新し、強い結束力が生まれている奈良。目指すところは、チーム初の5割以上、そしてプレーオフだ。「まずはそこをしっかりとこのメンバーで目指して、やっていくことが第一だと思います。コーチもバンビシャス奈良の歴史を“変えたい”と、ずっと言ってくれていて、それにみんなが応えようとしてくれている」(横江)。一足飛びにはいかないことも多い中、いま彼らは着実にそれを射程圏内にとらえつつある。

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まだまだ道半ば、チームもフロントも重要な局面へ
 レギュラーシーズン残り各26試合。香川は1月の信州ブレイブウォリアーズ戦で相手の強烈なディフェンスの前に今季初の連敗。しかし11月下旬に就任したポール・ヘナレHCの下、この敗戦を糧に、プレーオフまでに勝てるチームを再び構築してくることだろう。今週末(1/25、26)に控える広島との首位攻防戦は、その試金石となる。

 また奈良も第一関門である勝率5割に向けて、今週末の群馬クレインサンダーズ戦は意味合いが大きい。昨年はホームで2連勝を飾った相手であり、「勢いをつけられた、本当に今シーズンのベストゲームだったんじゃないかなと思います」と、横江が振り返るほど会心の試合運びができた東地区2位を相手に、アウェーでその再現を狙っている。

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 そして両クラブともに、フロントも選手たちの背中を押していきたい。プレーオフ進出が現実味を帯びてくれば、当然のことながら、将来を見据えたライセンスの取得に相応しいチーム体制の構築も必要不可欠。いずれも債務超過の状況ではあるものの、香川は第三者割当増資により、奈良は大手製薬会社『ロート製薬』とのスポンサー契約締結が決まり、債務解消の目途が立った。来たるリーグによる審査に向けて、コート外でも重要な局面を迎える。

  “歴史を変える“と取り組みはまだ道半ば。シーズンエンドに最高の結果を手にするために、彼らの挑戦は続く。