プロデビューの次はオリンピック
夢を手繰り寄せる秋田のホープ・保岡龍斗

2020年01月14日



文:hangtime編集部/写真:B.LEAGUE、FIBA.com

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 激戦の東地区でチャンピオンシップ進出を狙う秋田ノーザンハピネッツ。前田顕蔵新ヘッドコーチの下、積極的な戦力補強により上々の滑り出しを見せたが、ここに来てケガ人が続く苦しい状況に陥った。そんな中、若手の保岡龍斗はベンチスタートが多いものの全試合に出場し、日本人選手最長のプレータイムを記録するなど、チームの牽引役を務めようと懸命のプレーを見せている。

 そしてもう1つ、彼には大きな目標がある。2020年東京オリンピックに、3×3(スリー・エックス・スリー)の選手として出場することだ。この新種目を始めたきっかけは、長谷川誠3×3日本代表アソシエイトコーチ(秋田ノーザンハピネッツ)に誘われたから。江戸川大学卒業後、秋田でのプロデビューをサポートしてくれた恩人からの誘いであり、さぞや意気揚々と臨んでいると思いきや、当初はそうではなかったという。秋田の一員としてB.LEAGUEを戦いながら、並行して3×3で活躍するのは簡単なことではない。2019年12月25日、アルバルク東京とのアウェーゲームを終えた後、その想いを訊いてみた。

自ら仕掛ける解放感
 「正直、続けようとは思っていなかったです。誘われたので“やるのもありかな!?”ぐらいの気持ちでした。それがまさか、いきなり日本代表の合宿だったんです。それでもさほど心に響かなかったんですが、『週末に試合があるから出てみないか』って言われて……。補欠というか一応メンバーとして行ってみたらすごく楽しくて。5on5とは違うし、細かな約束事から解放された感覚があって、持ち味が発揮できたのかもしれません」

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 その持ち味というのは、ロングレンジの3Pシュートやアグレッシブなドライブ。フィジカルの強さにも自信があった。長谷川コーチもそこに着目しての抜擢だった。3×3を経験したことで、5on5でのプレーにも変化を感じているという。

 「5on5と違って展開が速く、そういう部分は自分も好きなんです。それに、やってみてわかったのは笛があまり鳴らない。少々のコンタクトでは笛が鳴りませんから、タフに行けるようになったと感じています。アウトサイドのシュートにしても、あまりレンジを気にしないで打てるようになりました。外国籍選手とのマッチアップも、前なら“やべぇ”ってなっていたのが少々のことでは動じないというか、3×3だともっとガツガツ体を寄せてくるので、負けちゃいられないという感覚ですね(笑)」

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 負けん気の強さも持ち合わせている保岡にとって、性格的に3×3は相性がいいのだろう。やればやるほど面白さを感じていると言うが、5on5との両立はやはり難しいようだ。

 「そうですね、少しムキになってしまうこともあるんですけど、やられたらやり返すというのは5on5でも同じ。短時間で攻守が入れ替わるので、その回数が多いというか、目の前の相手には絶対にやられたくないし、そういうシーンが多いのは向いているかもしれません(笑)。ただ、そういう場面で冷静に状況判断ができるようになるというのが、課題の1つだと思っています。
 ルールが違いますし、ボールが違います。そこが一番難しいですね。重さは同じでもサイズが違うので慣れるしかありません。それに5on5のシーズン真っただ中なので、両立するのは難しいんですけど、それぞれ集中力を高めて臨んでいます」

『JAPAN』の責任と希望
 当初、軽い気持ちで始めた3×3だったが、3×3は男子のみ開催国枠での出場が決まったことで、代表入りを目指す選手たちのモチベーションは格段に上がった。ライバルたちとの代表入り競争はここから熾烈を極める。

 「僕の場合、モチベーションが上がったのは、国際試合に『JAPAN』の一員として参加するようになったから。2018年の『3×3 FIBA ASIA CUP 2018』は3位という素晴らしい成績を収めていたのに、今年(2019年)は自分たちBリーガーが出場した同じ大会で、クォーターファイナルで負けて結果を残せませんでした。批判を受けましたし、求められているのは結果。そんな中、『FIBA 3×3 WORLD CUP 2019』を戦うことになり、約1カ月間、合宿やヨーロッパ遠征を行った上で出場しました。世界の壁を痛感しましたが、3×3のプレー歴が長い落合さん(知也:越谷アルファーズ / TOKYO DIME.EXE)、小松さん(昌弘:TOKYO DIME.EXE)と、僕や小林さん(大祐:茨城ロボッツ)という数カ月前に本格的に始めた2人がチームを組んでヨーロッパのチームに勝てたというのは進歩だと思います。収穫はあったし、これからどんどん経験を積みんでいけば、もっと勝てるんじゃないかという感触を得ました」

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 手応えを感じた部分があれば、課題も見据えている。5on5と3×3両方を経験することで成長も感じている。それはプレーだけにとどまらず、気持ちの変化が大きいようだ。5on5でチームプレーや与えられた役割の遂行力を身につけ、3×3では瞬時の判断力や決断力を磨いていく。4人の3×3日本代表入りに必要なのはFIBAの個人ランキングであり、条件の1つは、「日本人選手中10位以内(ここから最低2選手を選出)」か、「日本人選手中50位以内もしくはランキングポイント5万4000点以上を保持」していること。ランキングポイントを稼ぐには3×3の大会に出なければならず、ある意味、個人戦の様相もあってハングリーさも求められるのだ。

 「夢だったオリンピックという舞台でプレーできますから、これからは個人の戦いだと思います。だからこそ、自分が求められているディフェンスだったり、フィニッシュ力だったり、そういうところは5on5を通しても、しっかり練習していきたいと思っています。3×3の代表合宿に呼ばれたらしっかり自分をアピールしたいですし、疲れたとか言い訳はできません。ポイントを稼がなければ上には行けませんし、自分の成長もありません。もっとハングリーに挑みたいですし、自分の弱点は克服しなければと、強く思っています。ただ、B.LEAGUEを欠場して3×3に出るわけにはいきませんし、“秋田のために戦う”のがファーストオプション。3×3をやり始めたらチームが勝てなくなった、パフォーマンスが落ちたと言われるのは絶対にイヤなんです。
 3×3は試合中、コーチがいませんから自分たちでコミュニケーションを取りながら戦います。3×3をやるようになってから“自分発信”が増えました。今日の試合もそうですが、自分からまわりの選手に声をかけたり、ハドルでも言葉を発したりするようになりました。年下の方ですが、それは意識せず、積極的に声を出すようになりました。プレー中、年齢は関係ありませんから」

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 秋田のチャンピオンシップ進出、あるいはそれ以上の結果を残すというのが最大のテーマ。難しいシーズンを送っているがその表情は明るく、何度も力強い言葉を聞くことができた。プロ入りから“ホップ、ステップ”でオリンピック出場を視野に捉えた保岡は、その前に秋田でのさらなる飛躍を誓っている。大勢のブースターと一緒に勝利を喜び、その勢いを駆って夢の実現を目指していく。