コツコツ積み上げる努力を土台に、
飛躍のシーズンへ。川崎・青木保憲

2019年11月20日



文:hangtime編集部/写真:B.LEAGUE

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 「“青木を出したらディフェンスが締まる”そう言われるようにディフェンスの強度、インテンシティが上がるところをアピールしなければいけないと思います」──本人の言葉を借りるまでもなく、青木保憲はベンチからコートへ飛び出すと、相手のポイントガードを徹底して追い回す。ディフェンスで相手のPGを苦しめ、追い詰めてゲームを作らせないプレーを念頭に、常に努力を続けている。

 日本代表の篠山竜青、リーグ屈指のスピードを誇る藤井祐眞、シューターでありパスセンスも光る辻直人と、充実のラインナップを誇る川崎ブレイズサンダースのガード陣に割って入るのは至難の業。それは重々承知の上で入団した以上、何か武器を備えなければならないが、そのひとつがディフェンスであり、そのためにコツコツと努力を積み上げられる性格の持ち主だ。

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 今シーズン、川崎は佐藤賢次ヘッドコーチが就任するなど新体制で臨み、13勝3敗という好成績で中地区首位を独走中(11/17現在)。そんな中、特別指定選手契約を含め3シーズン目を迎える青木も心境の変化があったという。「神奈川ダービー(横浜ビー・コルセアーズ戦)」初戦で勝利した後(11/16)、まずはその変化について訊いてみた。

 「気持ちの部分で、昨シーズンまではハングリーさというか、向かって行く姿勢というか、そういう部分が足りなかったなという反省があります。今シーズンは体制が変わる中で、チーム内競争がテーマに掲げられ、コーチ陣もそういう雰囲気を作ってくれました。バチバチやり合うような環境があって、選手同士でもそういう姿勢を見せなければいけませんから。今まで自分が『セカンドユニット』と言われて悔しさもありましたし、どんどん下から突き上げていくことがチームのためにもなります。チーム浮上のカギのひとつとして自分の頑張りが求められているのはわかっていますから、そこはしっかりプライドを持ってやっていますし、できているという感覚が余裕というか、自信につながっているんだと思います」

──「プライドを持つ」というのは、チームに良いリズムをもたらしたり、劣勢を挽回したり、自分の仕事をやり切ろうという前向きな気持ちがあるからですね。
 「昨シーズンは、ディフェンスはアグレッシブに行けたんですが、オフェンスの部分、たとえばツーガードだったりすると、(篠山)竜青さんや(藤井)祐眞さんが先にクリエイトして、僕はそこに合わせるだけ、という感じでした。今シーズンは自分でクリエイトしたり、ゲームコントロールしたリ、プラスαの部分を練習から取り組んでいます。そういう意識をしっかり持ってプレーすること。それが昨シーズンより、上手くできていると思います」

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──特別指定選手として入団しましたが、当初は「凄い人たちがいるな」という印象でしたか?
 「もちろん、それは(笑)。雑誌やさまざまなメディアで見ていた、少し上の世代のスター選手たちですから。そういう先輩方と一緒にプレーするのは、ちょっと気後れするところがあったのは正直な気持ちです」

──率直な気持ちとして、最初はそう思うかもしれませんね。でも、同じコートに立っているんだと、冷静に自分を見つめられるようになったわけですね。それに、今シーズンは実績のある選手(大塚裕土、熊谷尚也)が移籍してきました。
 「同じプロとしてしのぎを削るのは当然のことですし、チームの雰囲気がそうなっていると感じています。キャリアのある選手が加入したわけですから、なおのこと結果を残さなければなりません。『もう次はない』ぐらいの覚悟で、プロの世界はやらなければならないという良いモチベーションになっています」

──ご自身はどこで勝負しようと思っていますか?
 「軸はディフェンス。そこは佐藤HCにアピールしなければいけませんし、買われているとも思っています。ただ、それにプラスしてオフェンス。コールプレーなどいろいろな選択を自分から仕掛けていきたいですし、ピック&ロールなどからのクリエイトも……ここはコーチ陣から常にアドバイスされています。『正しい判断、正しいバスケットをすれば必ず上手くいくから』と。その判断を、自分が率先してできる位置(立場)に立てたという実感が持てたのが今シーズンで、ようやくスタートラインというか……」

 福岡大附大濠高校や筑波大学という強豪校で鍛えられ、「バスケットに向かう姿勢が培われました」(青木)というように土台はできている。“常にバスケットにしっかり向き合う”気持ちの強さを持ち合わせる彼をもってしても、「今シーズンがスタートライン」だと思うほど厳しいプロの世界。川崎で目標とする選手たちに挑み、努力を重ね、追いつき追い越せの位置にたどり着いたという感覚なのだろう。

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 この日、佐藤HCの試合後のコメントはこうだった。
 「青木、林(翔太郎)、鎌田(裕也)はいつも良い準備をしてくれています。(今日も)彼らが出た時間でしっかりと存在感を示し、ステップアップしてくれたので、それが本当に良かったと思います。3人ともメンタル面が変わり、何をすべきなのかという役割をわかった上でコートに立っています。体つきが変わったことも自信につながっているんじゃないかと思います。試合に出られない時間が続いても、ずっとずっと準備をし続けてくれたので、信頼して使うことができました」

 チームの好調を維持するには選手層の厚みを増すことが不可欠だ。彼らに限らず、同世代の選手たちがB.LEAGUEでたくさん活躍している。ちなみに「神奈川ダービー」では、筑波大出身の選手が3人いた(横浜の生原秀将、小原翼と青木)。青木にとっては、それは大いに刺激になったようだ。
 「もちろんです! 筑波で一緒だった(馬場)雄大がアメリカに行っていますし、同じコートに立っていた選手がああいう飛躍を見せていますから凄く刺激になります。そう考えれば、“ちょっと休みたいなぁ”っていう時でも、やっぱり体育館に足が向きます。そういう仲間がいるのはプラスになります。杉浦(佑成:サンロッカーズ渋谷)もそうですが、学生時代から、自分が弱気になりそうな時に“アイツだったらこうするだろう”っていうのがあって、もう一歩頑張れるというのが間違いなくあるので、いい仲間に恵まれていると思います」

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──今日も生原選手をかわしてジャンプシュートを決めました。
 「そこは、正しいバスケットができた結果ですから(笑)。生原先輩にはよく面倒を見ていただきましたし、関わりのある選手たち、チームメイトだった選手たちと同じコートでプレーするというのはモチベーションになります。高校や大学で一緒に頑張った選手たちがいて、今、B.LEAGUEという舞台でプレーできるのはとても良い経験です」

 バスケを始めた時からひたむきに練習に取り組み、コツコツ努力を積み上げながら、いつも強豪チームの一員としてその名を連ねてきた青木。メンタル面の変化と合わせ、フィジカル面の強化にも余念なく取り組んだ今シーズンは、今までの土台に“自信と信頼”を上乗せし、さらなる飛躍を誓っている。