ルーキーにしていぶし銀
そして、“ピュアな魅力”の横浜・秋山皓太

2019年11月07日



文:hangtime編集部/写真:©B-CORSAIRS、T.Osawa

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 横浜ビー・コルセアーズの新人、秋山皓太は新潟県上越市の出身。上越教育大学附属中から新発田市立本丸中に転校し、全国中学校大会で優勝経験がある。その後、U16日本代表候補に選出されると高校は福岡第一へ。今度はU18の日本代表候補に選出され、東海大学へ進学する。2年の時にインカレ準優勝、4年でインカレ優勝と華々しいバスケキャリアの持ち主だが、学生時代はさほどプレータイムを得られず、「将来はプロで……」という強い想いはなかったという。

 ところが、学生バスケを終えた今年の2月、金沢武士団に特別指定選手として入団(12試合出場)した。ただ、「東海大は選手層が厚く、先輩方には本当に凄い選手がいます。みんな上手いし、『自分もそこ(B.LEAGUE)でやりたい』とはなかなかならなかった」とあくまで控えめ。大学卒業後、横浜の一員として、いよいよ本格的に『プロ生活』をスタートしたが、グイグイ前に出て行くタイプではないようだ。

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ベンチスタートの心得
 今シーズンの横浜は、10月を終えて4勝5敗ながら中地区2位。11月以降勝ち星を伸ばすにはベンチメンバーの充実が重要で、その一番手が秋山だろう。9試合すべてに出場し、1試合平均約10分のプレータイムで平均4.4点、3Pシュートを45.8%の高確率で成功させている。

 大事な11月最初の試合、横浜はホームに滋賀レイクスターズを迎えて2連戦を行った。滋賀は西地区5位で、連勝を目指したものの1戦目は72‐85で敗れ、翌日は79‐58で勝ち1勝1敗とした。1戦目の秋山は約19分間プレーし、20得点(フィールドゴール成功率72.7%)とオフェンスリバウンド3本を記録。2戦目は約15分間プレーして6得点(同33.3%)に終わった。話の訊いたのは2戦目の後、まずは自己評価を、とお願いすると、「チームですか、個人として?」と訊き返してきた。そこは、フォア・ザ・チームに徹する秋山らしい。

──ご自身のプレーを振り返ってください。
 「数字だけを見えれば昨日の方がいい。今日はいい形でボールが回ってきたのに3Pシュートは2本とも外しています。昨日が良かったと判断されるかもしれませんが、ディフェンスは(昨日より)上手く対応できたところがありました。ベンチスタートですから、やはりディフェンスが大事というか……シュートも大事ですけど、ディフェンスはチームの約束事を遂行しなければならないので、そういう意味で今日はまぁまぁ(笑)。スクリーンの対応など、昨日は上手くできなかった部分で今日はトライをし、良くなったと思います」

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──ベンチスタートの場合、「まずはディフェンス」からで、チームのリズムを崩さないように気を付けているんですね。
 「そこはフォーカスしていきたい。その上で、チャンスがあれば積極的にシュートを狙うとか、流れが悪ければ、それを変えられるように動けばいいと考えています。まずはディフェンスに意識を置いています」

──アップの時、ランニングシュートでパス出しをした後、全力でダッシュしている姿が印象的でした。それは、自然と身についたものでしょうか?
 「スタートではないし、一度ベンチに下がると体が冷えないよう気をつけなければなりません。だからアップでは走っておこうかなと。それに、一度息を上げておいた方が、いきなりベンチから出てプレーする際にやりやすい。いきなりだとキツく感じることもあるので」

 そこはベンチスタートの心得とも言うべき備え。学生時代に経験したことは何ひとつ無駄にしない。横浜入団を機に、プロの自覚が芽生えたのだろうか。

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プロ意識と向上心
──横浜ビー・コルセアーズの一員になり、プロとしてやっていこうという決意や想いはどう変化したんでしょうか?
 「金沢では学生の延長のようなところがあり、プロの世界が今ひとつ明確ではありませんでした。ここではプロ意識というか、多くの方々に支えられていることがわかります。チームやフロントスタッフを始め、ブースターさんもそうですし、メディアの方々もそう。B.LEAGUEの研修も受けましたし、プロ選手としての責任感が生まれました。自分の価値をコートで表現し、それらを認めていただくことが報酬につながる。それがプロなんだと、強く意識するようになりました」

──そうなると、自分のアピールポイントやここだけは負けたくないという意識も出てくるでしょう。
 「アピールポイント、ですよね。以前も『これといった武器はなくて、ディフェンスでもリバウンドでもハードに行くこと』と答えました。アピールポイントを答えるのが一番難しい。ディフェンスは約束事を守ることが重要なので、個人的なことで言えば、今、求められているのは外角シュートを高い確率で決めること。それは『誰にも負けないように』というより、ヘッドコーチの求めに応じられるよう準備しなければ、という気持ちです」

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 自己アピールは苦手でも、チームのためのプレーに徹するプロ意識と向上心が、彼の成長の糧となっているのは明らかだ。「彼は昨日も今日も活躍しています。ルーキーですが、怖いのも知らずのプレースタイルはとても好感が持てます。本当に素晴らしいシューターであり、スコアラーだと思います。チャンスを逃さず積極的にシュートを打つ姿勢があり、それはチームとしてとても助かっています。ディフェンスの面はもう少し頑張って欲しいところですが、とても期待しています」と、トーマス・ウィスマンヘッドコーチは信頼を寄せている。

 「それは自分にはよくわかりませんけど、期待には応えたい。信頼を得ているかどうか別にして、僕はウィスマンHCを信じていますし、だからこそ求めていることをやり遂げようと思います。そこで結果が出せれば、自然と信頼関係が生まれてくると思いますから。僕がコーチを信じて、やるべきことをやるだけです」

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派手さはなくとも実直に
 見た目の印象だが、横浜にはルックスの濃い選手が揃っている。その点で秋山は強烈インパクトに欠ける(ゴメンナサイ!)ようだが、プレーに磨きをかけてコーチの求めに応え、チームの勝利に貢献しようとする姿にはインパクトがある。その姿勢が、まわりからの評価につながっている。

 「どう評価されているはわかりませんけど、自分がやるべきことはしっかり準備して、求められるプレーをきちんとこなせる選手になりたいと思います。頭にあるのは、例えば良い形でボールが回ってきたらシュートを打つこと。たとえその前に、自分が何本もシュートを外していたとしても、そこで打たなければチームのリズムがおかしくなります。打たないのが自分勝手だと思うんです。良い形をチームで作って来たわけですから、そこで打たないともう一度作り直さなければなりません。そういうのは本丸中学で富樫(英樹)先生から教わったことが大きいですし、今になってその意味が理解できてきました。本当に大事なことを教わっていたと思います。器用なことはできませんが、これまで教わってきたことは突き詰めていきたいですね」

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 プレーやコメントからアグレッシブな姿勢が伝わってくる秋山は、コートではあまり感情を表に出すことはない。いぶし銀のごとく、自分の仕事に徹するのみだ。横浜のオフィシャルブーストソングの一節に「ピュアな魅力で敵を欺く あっと驚く忍びの海賊 #22秋山皓太~」とあり、(敵は欺くが)実直な人柄なのがありありと伝わってくる。

 インタビュー中、少しはにかむような笑顔を絶やさなかった彼の魅力──ビーコルブースターにはすでに知れ渡っていることだろうが──コート上のクールな表情と、その笑顔とのギャップに女性ファンがますます増えそうだ。