クレバー×スマート=ごまかし!?
新生ビーコルの一等航海士、生原秀将

2019年10月29日



文:hangtime編集部/写真:©B-CORSAIRS、T.Osawa

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 大学バスケの名門・筑波大学でキャプテンを務め、インカレ(全日本大学選手権)3連覇(2014-16)に貢献した生原秀将。満田丈太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、小原翼(横浜ビー・コルセアーズ)らと同期で、1学年下には杉浦佑成(サンロッカーズ渋谷)、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)らがいた。

 インカレ終了後の2017年1月、栃木ブレックス(現宇都宮)に特別指定選手として入団するとレギュラーシーズン11試合、チャンピオンシップ・セミファイナルのシーホース三河戦にも出場。翌2017-18シーズンは、スタートでの起用こそなかったものの57試合に出場し、平均17分38秒のプレータイムを記録した。

 プロでの活躍に手応えを感じつつ、2018-19シーズンは三河への移籍を決意した。開幕からレギュラーに定着し、順調にステップアップを果たしたかに見えた。だが、シーズン終盤はプレータイムが激減。特別指定選手の岡田侑大、熊谷航にその座を明け渡すことに。

 そんな状況を自ら打破すべく、新天地に選んだのが横浜ビー・コルセアーズ。話を訊いたのは新潟アルビレックスBBと対戦し、ダブルオーバータイムの激闘を制した後だった(10/23)。先行される苦しい展開が続く中、生原は持ち味を存分に発揮し勝利に貢献した。

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 横浜への移籍を念頭に、こんな質問からぶつけてみた。
──プロになって、難しさを感じたことはありますか?
 「大学で、本当にすごい壁に当たってしまって……その時、吉田健司監督から『バスケットというもの』を学ばせていただきました。戦術など細かな部分まで指導を受けることができたので、プロに入って悩むとかはとくに感じていません。大学で教わったことで、今の自分があると思います」

──昨シーズンの終盤は、自分のイメージと違う部分があったのではないかと思いますが。
 「チームによって考え方や戦術は変わってきます。プレータイムがもらえたかどうかではなく、自分が得意とする戦術ではないとしたら、結局は持ち味が発揮できないのでフラストレーションがたまりますし、評価も下げてしまう。今回は、自分の良さが出せる場所、持ち味を発揮できる場所として選びました。昨シーズンの終盤、チームが目指すバスケットにアジャストできなかったというのはありますけど、勉強になることもたくさんありました。栃木と三河でそれぞれのバスケットが勉強できたのは良かったですし、またトーマス・ウィスマンヘッドコーチと一緒にできるので、横浜への移籍は最善の選択だったと思います」

──ウィスマンHCから求められていることを、どのように理解されていますか?
 「1番で起用される際は、(田渡)凌くんがアタックする選手なので、僕にはゲームコントロールが求められます。それと同時にボールマンへのディフェンスやチームディフェンスを遂行することも。2番の場合は、『秀、今日はスコアしてこい(点を取ってこい)』という指示に変わります。でもそれは、普段から自分でも意識しているので、どちらでもフラストレーションなくプレーできています」

──ご自身は、横浜に何を求めて来たのか教えてください。
 「そうですね、リーダーシップを発揮できること。それは自分でもすごく重視しています。個人のテクニックや(チーム)ディフェンスにしても、上手く“ごまかして”プレーするのが大事だと思っています。声を出してチームを引っ張ったり、意思統一をしたりというのが好きなんですが、以前のチームではあまり発揮できなかった部分です。横浜ではそこもやりやすい環境で、普段の練習から言えますし、今日の試合でもみんなが応えてくれましたから、すごくやりやすいチームです」

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──起用法にこだわりはなく、自分の持ち味を存分に発揮できているわけですね。
 「そのこだわりは一切ないです。今、自分が目標にしているのは、チームの目標をセットアップして見返したい、そういう気持ちが強いですね。まだ数試合を終えたばかりで何とも言えませんが、今後、優勝経験のあるチームや上位のチームと対戦する中で、自分たちの現在地がわかると思います。それまでに勝てる試合は勝っておきたいですし、もしチームが良いオフェンス、良いディフェンスができていなくても、さっき言ったようにごまかせることはたくさんあると思っています。それは雰囲気だったりムードだったり……たとえ悪いプレーをしても、結果的にシュートが決まれば“ごまかせた”ことになる。みんなが下を向かず、常に上を向いていれば、悪いプレーも結果として良いプレーだと捉えることができるんです。そういうところは、まだこのチームには足りないと思いますから、そこを僕が引っ張っていきたいですし、大学などでいろいろな経験はしてきていますから、伝えていけたらいいなと思います」

 最初の質問は、昨シーズン終盤の状況があり、もしかしたら自分を見失っているのではないかという懸念からだったが、まったくの杞憂。彼にとっては大きなお世話だったに違いない。生原のバスケに対する姿勢はブレることがない。それは、学生時代に培った十分なキャリアに裏づけられたものだ。もちろん自負もある。

──外から見ていた横浜と、実際にプレーして感じた違いはありますか?
 「メンバーが代わっているので何とも言えないところですが、フロントも含めチームが1つになって戦いたいという気持ちが伝わってきます。ロスターが代わり、期待されているわけですから、とくに新しく入った選手たちが、その期待に応えられるようにしたいと思います。
 オフシーズン、凌くんから何度も連絡をもらって話をし、彼の言葉に賛同できることが多かったんです。今もよく話をしますし、バスケ以外の話をしていても、基本的に行きつくのはバスケのこと。このチームでいい成績を残して、強いチームにしたい。“勝ちたいね”っていう想いを共有する良き相棒というか、良い先輩です(笑)」

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 そういえばホーム開幕戦(10/11@横浜文化体育館)、生原が開始2分を過ぎたところで負傷退場した秋田ノーザンハピネッツとの試合後だった。記者会見に現れた田渡は、コートに戻ることができなかった生原を気遣いながら、「一番話をしているのが秀。アイツのために戦いたい」と熱く語っていた姿が印象的だった。良好な関係を保つ2人は、チームの先頭に立って引っ張っていこうという意識が強い。結局、鼻骨骨折で全治4週間と診断された生原は、その後1試合の欠場を余儀なくされた。

──チームメイトとして高め合う2人ですが、でもここだけは負けないぞ、というのを教えてください。
 「まぁ僕はごまかすのが好きなので(笑)。ごまかしてディフェンスしたり、ごまかしてオフェンスしたり、そういうのが得意というか、それしかできない。その結果として……どう見えるのかは人それぞれ、まわりの判断に任せるしかありませんが……そういうプレーが良く見えたり、勝利に結びつくパフォーマンスになったり、チームに貢献する重要な要素になるという考え方。それも一つの技術だと思います」

──ゲームの終盤、大事な場面でコートに立っている印象がありますが、それも自分の役割だという意識はありますか。今日も残り11秒までプレーし続けました。
 「そうですね。でも、大学では苦手だったんです。上級生になって、『チームを勝たせなきゃいけない状況(立場)』になり、何度もビデオを見たり、吉田先生に話を聞きに行ったりして、クォーターごとの終わり方、4Qのいい終わり方をしっかり学びました。その点は自分なりにはっきりと答えが出ているので、意識して続けたいですね」

 必ずしも生原のプレータイムが、前半より後半が長いわけではない。しかしながら、アタックタイプの田渡とゲームコントロールに秀でた生原が上手く役割分担しているように見える。あるいは同時に出たとしても、PGとSGというように、互いの力を引き出し合える。

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 自分の持ち味について生原は、何度も“ごまかす”という表現した。それは、どんな状況でも、絶対勝利に結びつけるという強い信念の表れだろう。荒れた試合なら落ち着きを取り戻し、勢いを感じればさらに加速させていく、そんな変幻自在の舵さばきこそ、彼が言う「上手く“ごまかして”プレーする」真骨頂。

 「どうすれば勝てるか……人一倍バスケットを勉強した自信はありますから、その経験が活きています」という彼はさまざまな状況を的確に判断し、必要なプレーを選択することができる。

 まだ数試合を消化時点で今後を判断するのは早計だが、生原という一等航海士を得た海賊船は、「チャンピオンシップ」という新大陸へとたどり着くはずだ。