SR渋谷・杉浦佑成が感じさせた変化、
3×3で積んだ自信を糧に

2019年10月15日



文:大橋裕之/写真:B.LEAGUE、3×3.EXE PREMIERphoto_734861

思わずにはいられなかった3×3の成果
 「積極性は絶対に培われたと思う」――これはサンロッカーズ渋谷の杉浦佑成が、9月の3×3.EXE PREMIERのシーズン最後の試合を終えての言葉だ。そして約1カ月後、2019-20シーズンのB.LEAGUE開幕戦で、彼は約12分の出場時間で7本の3Pシュートを放ち、うち3本は3連発。前年度リーグ準優勝の千葉ジェッツ撃破(88-80)の大きな力になった。相手の状況を見ながら間合いを見極めて1本、セットプレーから思い切りよく2本を打ち切った姿を見ると、5月から約3カ月間、3×3にひたむきに取り組んだ成果を体現したと思わずにはいられなかった。

photo_734855いきなりMVPも胸を張り切れず
 さかのぼると、彼はB.LEAGUEの2018-19シーズンを終えると、3×3チームのTACHIKAWA DICEに加入して、3×3.EXE PREMIERをはじめとしたツアー大会に参戦した。加えて、小林大祐(茨城ロボッツ)らとWILLに所属して、韓国リーグにも挑戦。ただ、PREMIERのデビュー戦でいきなり大会MVPを獲得したものの、幸先のいい結果に胸を張り切れず、どうにか一日を乗り切った様子が印象的だった。

 「ちょっともうヤバイと思いました。(5人制と)環境も違うし、観客も多いし、(強い)風も吹いている。大丈夫かなと思ったんですけど、チームメイトが心強くて、やっているうちに落ち着いてきました。強いチームだからこそだと思うんですよ、(自分のような)全然ダメなヤツがいて、勝てるというのは。決勝は緊張もしたんですけど、すごい興奮して、ゾクゾクしていました」

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 その後も、3×3日本代表に選出されて、FIBA 3×3 ASIA CUPに出場したが、不慣れで準備期間も短い中で臨み、決勝トーナメント初戦でオーストラリアに大敗。「フォーメーションがあるんですけど、あの時はそれに固執しすぎた」と、柔軟な状況判断ができず、味方のドライブのコースを潰してしまうことさえあった。3×3のスタートは苦労のほうが多かったと言える。

積んでいくことで変わった姿
 しかし、持てる力はB.LEAGUEでもトップクラスの可能性を秘めており、インカレMVPなど学生時代から残してきた実績は多くの人が知るところ。彼は3×3にとにかく慣れるべく、毎週のようにゲームに出続けた。公式戦は実に18大会に及ぶ。その甲斐もあってゲームを追うごとにボールを持ったら自分でリングを狙うシーンが増え、強気にドライブを仕掛ける姿も増え始める。6月頃はまだ、「このチーム(=TACHIKAWA DICE)だからこそ、早く慣れているように見えるのかなと」と、成長は実感できていない様子だったが、7月にホームである立川で開催された大会では、地元のファンの前で優勝する原動力になった。大会MVPこそ逃したが、準決勝のTOKYO DIME戦では5本の2Pシュートを含む14得点をただき出す圧巻のパフォーマンス。

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 彼をDICEに迎えた同チームの劉生琢行ゼネラルマネージャー補佐は、その姿に「正直、準決勝の杉浦選手の活躍を見ていると、思わず涙ぐんでしまった」と言うほど。「初めての競技で、最初は本人も戸惑いながらやっていましたが、試合に出るにつれて、どんどん自信がついて、本人が持っている本来のパワーをようやく発揮してくれたと思います」と、その姿に目を潤ませていた。

 コートに立ったその顔つきが変わっていく様子は明らかであり、開幕から32戦無敗というリーグレコードを打ち立てた試合後には、本人も「間違いなく、上手くなっていると感じています。なかでも3×3は自分でボールを持つ時間が長いので、気持ちの部分で焦らないことが、かなり良くなっていると思います」と、確かな手応えをつかんだ。

悔しさは残るが、3x3で得られたもの
 一方で、総合優勝のかかった3×3.EXE PREMIER 2019 PLAYOFFSでは、一発勝負のトーナメントでKO負けの初戦敗退。5人制のシーズン開幕が迫った中、4人そろっての練習ができなかったことも響き、「相手にリードされて焦ってしまった。その流れで、僕もミスがどんどん出てしまって、またさらに崩れしまった」と、無念の表情を浮かべた。それでも、彼が3カ月間、競技に向き合い、積んできたことは紛れもない事実。チームメイトのルーク・エヴァンスも、「彼自身すごく自信がついたんじゃないかと思う。シーズン後半になるにつれて非常に良くなってきた」と、その努力を称えた。

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 そして本人は冒頭で語った「積極性」に加えて、「(シュートの)フィニッシュ。B.LEAGUEの外国籍選手はブロックがすごい高いですけど、それでも決め切れるようなコンタクトは十分こっち(=3×3)も激しいので、それは活かしていきたい」と、新シーズンに向けて前を向いた。

 さらに、「やっぱり(国内ランキング)TOP10は入れたらいいですよね」と6月に語っていた目標も、現在では日本ランキング7位(10/13時点)が物語る通り達成。 目に見えるカタチでも結果を残した。もちろん道筋ははっきりしていないというが、「オリンピック(の代表)に選ばれるというか、出る自信は以前よりもあります。でも、もっと競った中でシュートを決める、海外だったらうち(=TACHIKAWA DICE)にいるような外国籍選手に(マークを)つかないといけないので、フィジカルに守ることができれば、結構良い位置にいるのではないかと思います」と、その歩みは着実に前進している。

ベンドラメも期待、佑成は世界へ羽ばたけるか
 B.LEAGUE開幕の第2戦、プレータイムは約8分に留まった。ただ伊佐勉ヘッドコーチ曰く、「彼が悪いということではなくて、自分たちの組み合わせと対戦相手の組み合わせで今週はこう(彼を除く10人が10分以上の出場時間でタイムシェア)なりました」と、戦況に応じた起用であったとのこと。あと58試合、大きく変わった姿をどれだけ表現し、チームとして3シーズンぶりのチャンピオンシップ進出に貢献できるか。

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 彼を特別強化指定選手の頃から見ているベンドラメ礼生は、開幕2連戦を含めて、その変化を次のように感じている。「もちろんシュートも打つんですけど、ドライブの意識が強くなっているなと感じています。でも僕は佑成にもっと良いプレーというか、積極的なプレーを求めている。彼にはもっとやって欲しいなと思います」と、さらなる活躍に期待を込めた。来夏、渋谷から世界に羽ばたけるか、勝負のシーズンを杉浦佑成は戦う。