地域リーグからB1へ
元NBA戦士と抱く夢の実現

2018年07月20日



文:吉川哲彦/写真:皆人公平

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アリーナ先行でB.LEAGUEを目指す
 新たに岐阜スゥープスが参入し、2018-19シーズンのB3リーグは10クラブで争われる。そして、岐阜に続いてB3参入を目指す動きが各地で見られる中、今後注目を集めそうなクラブが『佐賀バルーナーズ』だ。ピラミッドではB3のすぐ下に位置する地域リーグで開幕2連勝を飾り、天皇杯県予選も突破と良いスタートを切っている。B3に参戦するには運営会社である株式会社サガスポーツクラブの経営体力が問われることになるが、9月の準加盟認定を経て、おそらく来年3月頃にB3ライセンスを取得することになるだろう。

 2023年の佐賀国体に向けて新アリーナが建設されることがクラブ創設の契機の1つであり、そのアリーナがB1ライセンスの基準をクリアする5,000人規模であることも注目ポイントだが、それ以上の大きなインパクトが、NBAロサンゼルス・レイカーズでの優勝経験を持つサーシャ・ブヤチッチ(スロベニア出身)の招聘だ。

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ビェコビッチ、竹原社長、ブヤチッチ。ブヤチッチが手にするのがチームロゴだ。

兄弟で担うプロクラブの土台づくり
 クラブの竹原哲平代表取締役社長は、現職に就く前はイタリアのサッカークラブの関連会社に勤務。現地でフィアット・トリノ(イタリア)に在籍するブヤチッチと出会い、今回の人事につながった。イタリアで現役を続けているブヤチッチは“アンバサダー”としてクラブに関わることになり、現時点では佐賀でプレーする予定はないが、竹原代表は「アンバサダーというポジションですが、社長でもあると僕は考えています。僕自身経験が少ないので、何かあった時はサーシャに訊いて決めるということになります」と、特にチームづくりの面で大きな権限を持たせる意向。

 当のブヤチッチも「ゼロからつくる楽しさがある。まずは選手を選ぶところから始めたが、1年だけでなくB1までの4年間を戦ってくれる選手、チームとしての方針を理解してくれることと人間性を重視した。僕にはアメリカで最高のチームを見てきた経験がある。地域リーグではあるが、自分の力を注ぎこんでいきたい」と、自らが手がけるチームづくりへの決意を表した。

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 そして、そのブヤチッチの片腕とも言うべき存在が選手兼コーチのアル・ビェコビッチ。25歳とまだ若いが、ブヤチッチは「僕のバスケット人生には常に弟がいた。自分の分身になれるのが彼だった」と、自身の弟でもあるビェコビッチに全幅の信頼を寄せており、ビェコビッチも「(兼任が)難しいということはわかっているが、今いる7人の選手は尊敬の気持ちを持ちながら僕に接してくれているし、僕たちのビジョンも理解してくれている。今のところは順調だと思っている」と手応えを感じている様子。選手としてどのようなパフォーマンスを披露するかだけでなく、指揮官としてチームをどう導くかが大きなカギを握ることになるだろう。

 2人ともこれまで日本とは特に縁がなかったとのことだが、ブヤチッチは「バスケットの文化ができやすい環境かなとは感じている」とコメント。そのブヤチッチから「アルは日本の試合をたくさん見ているよ」と話を振られたビェコビッチは、「見ていて一番感じるのは、日本のバスケはチームプレーということ。バスケットは5対5のチームスポーツなのでそこは日本の魅力だと思うし、我々としても意識していきたい」と印象を語った。「これからの日本のバスケット界に必要なものは?」との問いには、ブヤチッチが「バルーナーズがB1に上がること」と即答。これは、クラブを成功に導く自信の表れとみていいだろう。

 「バルーナーズ」の名は、毎年秋に開催されている佐賀の風物詩、佐賀インターナショナルバルーンフェスタ(熱気球の競技大会)に由来する。まだB3への準加盟申請を済ませたばかりではあるが、目標はB3とB2をそれぞれ1シーズンで通過する“B1最短昇格”。2021‐22シーズンの開幕を迎える秋、青空を彩る数々の気球とともにバルーナーズがB1のステージへ天高く舞い上がることができるか、その行く末を期待して見守りたい。