地域密着型チームの存在意義
東京羽田と新潟の場合

2017年11月24日



文:吉川哲彦/写真:WJBL171013HAN08_03

 B.LEAGUEは各クラブ名を見てもわかるように、地域密着型クラブが集まったプロリーグである。そのミッションには「日本代表の強化」も当然のように含まれているが、現状ではアジアで勝てるかどうかというのが正直なところ。女子のほうが世界で戦えるレベルにあることは、近年の国際大会での成績を見れば明らかだ。

 しかし、国内リーグに目を向けると、Wリーグはいまだ企業形態のチームが主体となるアマチュア組織にすぎない。世界に通用する選手を多く輩出しているにもかかわらず、プロであるB.LEAGUEに比べるとその知名度は低い。そんな中、企業主体のWリーグにも地域密着を掲げるクラブチームが3つある。東京羽田ヴィッキーズと新潟アルビレックスBBラビッツ、山梨クィーンビーズだ。

 その中から今回クローズアップするのは東京羽田と新潟。東京羽田は企業チームからの脱却を図って生まれたチームであり、新潟はその名前からもわかるように、日本初のプロクラブである新潟アルビレックスBBの兄妹チーム。イベントやクリニックに出向き、地域と交流を持つことをB.LEAGUEの選手と同じようにこなしている。

「直接届く声、喜ぶ顔」が力になる
 生え抜きとして新潟で5シーズン目を迎えた井上愛は、観客や地域住民との距離の近さがチームの魅力だと言う。

 「直接私たちに声が聞こえてくる機会が多いので、その人たちのために頑張ろう、喜ぶ顔が見たいと思うことができる。私は企業チームにいたことはないですが、そこが一番違うところなんじゃないかと思います。もちろんお客さんが来れば来るだけ応援してもらっていることを実感しますし、その熱を勝利に変えたいという気持ちは強いです」

 その思いを抱いているのは東京羽田の選手も同じ。むしろ、企業チームから移籍してきた選手の多い東京羽田のほうが、企業チームの事情を知っている分、地域活動の重要性をより強く感じているかもしれない。そのことは、かつてシャンソン化粧品に在籍していた森本由樹の言葉からも感じ取れる。

 「私がいたシャンソンは『守られた世界』で、選手はただ会社の敷地内と寮を往復する、その繰り返しでした。でもここでは地域の方に顔を知ってもらう、活動を知ってもらうために自分たちからいろんなところに出ていかないといけない。チケット収入もチームにとって大事なので、応援に来てもらってバスケットを面白いと思ってもらうことも仕事なんだと思うようになりました」

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地元ファンの“熱さ”に支えられる充実感
 「ファンの存在が選手の背中を押す」というB.LEAGUEでは当たり前のことも、チームを持つ会社が試合会場に応援団を送り込むWリーグでは必ずしも当たり前ではない。「ファイナルで代々木第二体育館が満員になっても、お客さんはニュートラルな人が多い。東京羽田のホームゲームはそれよりお客さんの数は少なくてもみんな私たちを応援しに来てくれているので、テンションが上がります」と森本が言うように、やはり地域と良好な関係を築いているか否かで客席の熱気も変わるのだ。それを今一番実感しているのは、トヨタ自動車から東京羽田に移籍して間もない丹羽裕美だろう。

 「トヨタは会社からバスが出て、会場が真っピンクになるのがすごいと思ってたんです。でも、東京羽田のファンはみんなチームが好きで、バスも出ないのにわざわざ来てくれるのが本当に嬉しい。負けが続いていても『頑張れ』って応援に来てくださって、毎回毎回励まされてます。『1人じゃない、みんないる』って思って戦えるので、コートに立っていて楽しいです」

バスケの魅力、地道な発信でファン拡大
 このように、Wリーグもチーム単位で見れば熱心なファンが増えていることは確かだろう。しかし繰り返しになるが、B.LEAGUEと比較すると人気や知名度で劣っていることも事実。国際競争力は女子のほうが高いにもかかわらず、国内で目立っているのは男子なのだ。

 その最大の原因はメディアへの露出度。「やっぱり男子のほうがダンクとか派手なプレーがあって、バスケの経験がない人にもわかりやすい。それに比べると女子は専門的な知識がないとわからないプレーが多い」という井上の指摘も、結局はB.LEAGUEのほうがそのエンターテインメント性の高い部分をうまくプロモーションしているということにつながる。

 国際大会で結果を残しているのならば、認知度もその実力に見合ったものであることが望ましい。そのために地域密着型のチーム、選手ができることは何なのか。東京羽田と山梨にも在籍経験のある畑中美保(新潟)は、やはりバスケットボールという競技そのものでアピールしたいと語る。

 「リーグも移籍を自由にしたり、改革とまではいかなくても変わろうとはしている。時間はかかると思うんですけど、WリーグもB.LEAGUEに負けないくらい盛り上がっていける要素はありますし、私たちは根強い応援という強みがあるので、企業チームに負けないように結果を残していければと思います」

 一方、丹羽は「私はうまくしゃべれないので、メディア露出は渡嘉敷(来夢・JX-ENEOS)のような目立つ人に頑張っていただいて……」と笑いつつ、「身近に感じてもらえたらと思って、SNS発信はトヨタの時よりも積極的にしてます!」とプレー以外のところでも認知度向上に一役買う姿勢を示した。これはやはり、ファンの大切さを人一倍感じているからこその発想だろう。

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地域密着こそがファン開拓の肝
 地道ではあるが、地域との交流という下地があってこそファンが増え、チームの成長につながり、バスケット界全体の活性化にも結びつくのではないか。それを今、実践しているのがB.LEAGUEであり、後に続こうとしているのがWリーグの3つのクラブチームなのだ。昨シーズンから新潟の指揮を執る小川忠晴ヘッドコーチは、現役時代に新潟アルビレックスBBに在籍しており、地域に根付く重要性を早くから理解している。

 「やっぱりB.LEAGUEの盛り上がりを見てると、あんな中でやってみたいなと思いますよ。あれくらい注目されるようになったら、女子のバスケット界も価値観が変わってくるでしょうね。そのために何ができるかといったら、先を見据えてバスケット人口を増やすこと、多くの人に興味を持ってもらうことが一番。地域のクラブチームとして、イベントに呼ばれれば積極的に出ていくべき。選手たちには負担になるけど、そこは大事にしないといけない。新潟の選手たちはその大切さをよくわかっているし、男女関係なく同じバスケットというくくりの中で盛り上げていければと思います」

 地域密着の重要性はB.LEAGUEと各クラブが証明済み。Wリーグにおいては、山梨を含めた3チームが人気向上の面で大きな役割を担っているはずだ。成績面で企業チームに劣るとしても、その存在には注目していかなければならない。