車椅子バスケ、最終日は5千人以上
“激しい”攻防と世界基準の2人

2017年05月11日



文:大橋裕之/写真:大澤智子

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5,000人以上の観客が集まった最終日
 5月は日本のバスケシーンが1年で最も賑やかと言っても良い。今年はB.LEAGUEの初代王者を決めるチャンピオンシップやB1残留&昇格プレーオフ、そしてB1・B2入替戦が行われる。大学では関東や関西で春のトーナメントが開かれ、高校に目を向けると恒例の能代カップ。ストリートでは国内No.1の屋外5on5トーナメントであるALL DAYが控える。

 そんな中、車椅子バスケのクラブ日本一を決める『日本車椅子バスケットボール選手権大会』が5月3日~5日まで東京体育館で行われ、決勝で宮城MAX(宮城県)がNO EXCUSE(東京都)を55-52で破り、9連覇を達成。最終日には史上初めて5,000人を超える観客(5,051人)が集まるなど、注目の高さがうかがえる大会となった。

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ルールには似れども“バスケ”以上の激しさ
 障がい者スポーツとして認識されている車椅子バスケであるが、近年、健常者がプレーしたり、大会に参加できたりするケースが増えている。基本的なルールは下記の通り、一般的なバスケと同じだ。

・1チーム5人で、10分のピリオドを4回。

・リングの高さは3.05m、3Pシュートラインは6.75mなどコートの規格は同じ。

・時間制限も同様に、攻撃側には24秒、8秒、5秒、3秒のルールが適用される。

 別のスポーツとイメージするより、車椅子に乗っているとは言え、一般的なバスケを見る感覚と近いという印象だ。ゴール下での攻防やリバウンドからの速攻、スクリーンを使ってシュートチャンスをつくり、インサイドへの合わせのプレーだってある。戦術的に通じる部分は多い。

 もちろん、特有のルールも存在する。ひとつは、ダブルドリブルがない。車椅子をこぐ(=プッシュ)のが2回以内でドリブルをすれば、またこいでもよい(3回以上こぐとトラヴェリング)。もうひとつは、障がいの程度によって、選手各自は1.0点から0.5点きざみで4.5点までの持ち点でクラス分けされている(数字が大きいほど障がいは軽度)。試合中はコート上の5人の持ち点計が14点以内(※)にする必要があり、これによって障がいの軽い、重いにかかわりなく、両チームが平等な条件でプレーすることができる。

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 本質的にはバスケと同じでありながら、車椅子を操作しながら、フルコートで激しい接触や転倒(原則、自分で起き上がることが必要)を物ともせずに40分間くり広げられる。ブレーキはついておらず、ストップやターンを連続して行い、速攻の場面ではプッシュして一気に加速させるなど、相当なエネルギーを使う。確率が高いとされるフリースローでさえも、シュートリリース時に若干、車椅子が動くため、そのブレを考慮に入れる必要がある。バスケの面白さに車椅子ならではの高度な操作スキルやコンタクトの激しさが融合されるところに、この競技の醍醐味が詰まっているように感じる。「障がい者」「パラ」という言葉がなくてもいいぐらいだ。

ドイツで戦う世界基準の2人
 どのスポーツにも言えることだが、競技が発展、注目を集めるうえで「世界基準」の選手は必要不可欠であり、今大会の決勝で対戦した宮城MAXとNO EXCUSEにドイツの車椅子バスケットボールリーグのブンデスリーガでプレーする選手がいる。

 ひとりは優勝した宮城MAXの藤本怜央(33歳)。リオパラリンピックでは日本代表の主将を務め、今大会は2年連続のMVP&2年ぶりのベスト5に選出された。国内ではセンターとしてのサイズ、鍛えられたフィジカルは他選手を大きく上回り、インサイドでの存在感は抜群だ。力で押し込むプレーをする一方で、柔らかいタッチでミドルレンジのシュートを決めるうまさもある。車椅子バスケ初心者でも「この選手、スゴイ!」と思わせる、大黒柱という言葉がピッタリの男だ。

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 もうひとりは惜しくも準優勝となったNO EXCUESの香西宏昭(28歳)。リオパラリンピックでは日本代表の副将を務め、今大会は2年連続のベスト5に選ばれた。ポジションはスモールフォワードであるが、ポイントガードのようにゲームを組み立て、自分で得点を狙いつつ、マークが寄ればパスを散らして、仲間のシュートを引き出していく。車椅子をトップスピードに持っていく力やストップ、ターンがそれを支えており、コートで“違い”を生み出せる存在だ。

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「バスケ」同士のコラボをもっと見たい
 日本のバスケを取り巻く環境は、昨夏のリオオリンピックでの女子日本代表のベスト8進出に始まり、B.LEAGUEの誕生と各チームの奮闘、ゴンザカ大の八村塁が全米選手権で準優勝を経験するなど、注目される話題が徐々に増えてきた。車椅子バスケも国内で9連覇のチーム、海外挑戦する選手、今年6月には3年後の東京パラリンピックで活躍が期待されるU-23世代が世界選手権 (カナダ・トロント) に出場と、明るいニュースばかりだ。車椅子を使うとはいえ、突きつめれば「バスケ」ということを考えると、もっともっと目に見えて競技団体やチームの垣根を越えてコラボ、応援し合える関係をつくってもらいたい。さらにわれわれメディアも、多様なバスケの魅力をファンに伝えていかなければならない。きっとその積み重ねが、“バスケ”全体の盛り上がりにつながっていく。

※今大会より初めて女子選手の出場が認められた。最大2人まで同時に出場することができ、持ち点は女子選手1人につき1.5点で、2人だと3.0点。そして、その分の上限があがるため、コート5人の持ち点計が14点から17点まで引き上げることが可能になった。大会ベスト5には選ばれた藤井郁美(宮城MAX)は正確なシュート力を武器に、9連覇に大きく貢献した。

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