AKATSUKI FIVE男子日本代表
Window3の連勝で「2次予選」へ

2018年07月06日



文:永塚和志/写真:大澤智子

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 チームもファンも、胸をなでおろした。

 『FIBAワールドカップ2019 アジア地区1次予選』を日本は2勝4敗で終えた。開幕からの4連敗から最後を2連勝で締めくくり、なんとか次の2次予選へ駒を進めることができた。先日のWindow3の2試合。日本はオーストラリアを相手に歴史的勝利を飾り、続くチャイニーズ・タイペイ戦はその勢いを駆って108‐68と大勝した。

 しかし、そこに至るまでは苦しかった。昨年11月、駒沢体育館で迎えた日本にとっての開幕(Window1)。日本は序盤の劣勢を挽回して一時は逆転を果たすも、老獪かつ勝負強いフィリピンに再逆転を許し敗戦。続くアウェーでのオーストラリア戦はこの地区ナンバー1の実力を誇る相手に圧倒され、連敗。Window2では、確実に白星を挙げておかねばならないチャイニーズ・タイペイに1点差で敗れ、そしてフィリピンとの再戦でも勝てず、暗雲が立ち込め始める。

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 だが、上述したようにWindow3で状況は一変する。4月に帰化を果たしたニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)とゴンザガ大に通う将来のNBAドラフト候補、八村塁が加入したことで、日本はまったく別のチームへと変身する。6月29日、前回は叩きのめされたオーストラリアを破る快挙を果たすと、先述の通り最終戦のチャイニーズ・タイペイ戦を快勝。逆転で1次予選突破を決めた。

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 「2次予選へ行くことができるのはすごく嬉しいです。そこが一番重要でしたから」。チャイニーズ・タイペイ戦後。数日前にオーストラリアから歴史的勝利を収め、この日は完勝を収めたフリオ・ラマスヘッドコーチは静かにそう話した。

 サイズや運動能力のあるファジーカスと八村の加入が大きかったことは「言わずもがな」だ。彼らがそれまで欠けていた得点力やリバウンド力をもたらし、相手選手を引きつけることで味方をも活かすことができた。

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 ラマスHCの来日が遅れ、代表チームとして長期の合宿を組むことがなかなかできず、彼のバスケットボールをより深く浸透させる時間が足りなかったこともあるだろうが、4連敗と結果が出ていなかったのだから関係者たちは口を閉ざすしかなかった。

 ただ、蒔いた種は少しずつ芽吹き始めているようにも感じられた。2016年、リオ五輪への出場をかけた世界最終予選で1勝も挙げられずに終わった日本。日本バスケットボール協会(JBA)は同年終盤からからシーズン中にもかかわらず、30名ほどの代表候補を招集して月に1度の合宿を開き、当時のルカ・パヴィチェヴィッチJBAテクニカルアドバイザー(後に日本代表HC代理。現アルバルク東京HC)によるピック&ロールをはじめとする世界水準の戦術面の浸透や、NBAでの実績がある佐藤晃一パフォーマンスコーチらによるフィジカリティ強化などの共通意識の徹底を施してきた(パヴィチェヴィッチは代理HCを担っていた時「これほど充実したスタッフ体制は世界を見渡してもなかなか見られるものではない」と話していた)。

 こういった取り組みというものの効果は、一夜明けたら昨日と比べて劇的に変化していた、というような形ですぐに出るものではない。日本は安定した得点を挙げられるフィニッシャーがこれまでほとんどいなかったし、またリバウンドに関しても恒久的な課題であった。こういった点はこの4連敗の間、明確に露呈している(4連敗中の日本の1試合の平均得点は70.5でグループ最下位。また全試合で相手にリバウンド数で上回られている)。

 この課題を、最後のWindow3ではファジーカスと八村が入ったことで解消することができた。Window1ではリバウンドの数で27本もの差をつけられたオーストラリアに対して、2度目の対戦ではその差を6本にまで減らすことに成功し、上述の通り勝利を収めた。得点面でもファジーカスが25得点、八村が24得点と“ニューカマー”の2人が見事な働きをした。

 そしてチャイニーズ・タイペイ戦。強敵オーストラリアを倒していたとは言え、この試合に勝たなければ1次予選で敗退という状況であった日本。しかし、生まれ変わったかのように勢いを得たチームは圧倒的な勝利で2次予選への切符を手にした。

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 富樫勇樹(千葉ジェッツ)は、1次予選が終わって改めてリバウンドの重要性を強調した。リバウンドで相手に水を開けられてしまうと自軍のシュートがどれだけよく入っても劣勢を強いられてしまう、と話した。「(相手とのリバウンドの差を)最低限1桁に詰めることができれば日本は戦えると思う」。

 ファジーカスと八村が加入したから強くなった、と確かに言える。だが――本当にまだ目に見えての効果は十全に発揮できていないかもしれないけども――JBAがこの2年ほどで施してきた強化策の成果も一定程度、このWindow3の2試合で見えてきたと言えるのではないか。

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 大半の選手たちが2年前に新設されたB.LEAGUEという、これまでの日本のトップリーグにはなかった、より厳しい環境で戦ってきたことも見逃せない。

 馬場雄大(アルバルク東京)が言う。「世界基準の選手がいっぱいB.LEAGUEに入ってきて、僕ら日本人選手たちのスタンダードも上がっていると思いますし、国際試合でも全然、臆せずやれています。それは本当にB.LEAGUEのおかげです」。

 日本代表が無事、2次予選へ進出することができたことをポジティブに書いた。2連勝を果たし2次予選進出を決めるという結果が伴ったからこそ、そうできたということを吐露しておく。

 厳しい現実も直視しなければならない。最後に見事な試合をしたといってもトータルでは2勝4敗と負け越したチームなのだ。2次予選が始まると、アメリカの大学へ通う八村は参加できない可能性が強い(シーズンが始まる前の9月の2試合への出場の可能性はある)。

 ただし、そうは言っても、現在漂う空気は期待に満ちたものだ。ラマスHCが着任してからまもなく1年が経つが、バスケットボールのスタイルや国民性など、アルゼンチンのそれとは相当に異なるであろうから、順応するだけでも大変だったはずだ。しかし1年経ってより理解が深まった今、ラマスの日本代表はさらに良いチームへと変貌していく可能性は大いにある。

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 2次予選。日本は1次でも一緒だったオーストラリアとフィリピンと、グループDから勝ち上がってきたイラン、カザフスタン、カタールと同組(グループF)に組み込まれた。

 AKATSUKI FIVEの戦いは、ここから本格化する。