衝撃デビューの八村&ニック
短期間で“波長”を合わせられるか

2018年06月20日



文:皆人公平/写真:大澤智子

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 “希望が、帰ってくる。”──6月15、17日の両日、韓国代表を招いて開催された「男子日本代表国際強化試合2018」のポスターに記されていたキャッチコピーである。ポスターのメインビジュルは八村塁。明成高でウインターカップ3連覇を達成し、卒業後、アメリカのゴンザガ大に進学すると、NCAAトーナメントで準優勝を経験するなど、まさに逸材。しかし、まだ弱冠20歳の若者に希望を押しつけていいのだろうか、プレッシャーに潰されないだろうかと、一抹の不安を感じたものだ。

 そこには『FIBAワールドカップ2019 アジア地区1次予選』で4連敗を喫している日本代表の窮状が透けて見える。B.LEAGUEのシーズン真っ只中に行われたWindow1、Window2では思うような結果が得られず、残るはWindow3のみ。

 ポスターのことについて聞かれた八村はこう答えている。「それはチームの外で動いていることなので。僕はチームの中では1人の選手ですから、このチームメイトと一緒にプレーできることが嬉しいですね」──彼の活躍に大いに期待したい。

■男子日本代表国際強化試合2018
6月15日(金)19:30TIPOFF@大田区総合体育館(東京都大田区)
日本代表 ○88‐80● 韓国代表

6月17日(日)13:30TIPOFF@ゼビオアリーナ仙台(宮城県仙台市)
日本代表 ●87‐99○ 韓国代表

 第1戦、“希望が、帰ってきた!”──八村のプレーを見た誰もがそう確信したはずだ。インパクト十分の活躍を見せてくれた。スタートに名を連ねると25分47秒のプレータイムで17得点、7リバウンド、2ブロックショットに4アシストも記録した。結果は88‐80で日本代表が勝利を収めた。

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 アメリカ仕込みの迫力あるプレーは圧巻で、韓国代表が手を焼いているのが目に見えてわかった。試合後、日本代表を率いるフリオ・ラマスヘッドコーチは、「韓国戦はWindow3の準備のための試合。韓国代表は強敵だというのがわかっていても、戦わなければいけない。今日は結果としてつながったのがすごく良かった。最初の5分間ぐらいは韓国がリードしたが、それ以降は我々がゲームをコントロールした。リバウンドを見ても勝っているし、ディフェンスもしっかりでき、リバウンドが取れたことで得点につながった」とふり返った。

 もちろん、八村の存在は大きかった。が、もう1人、秘密兵器ともいうべき男の存在を抜きにこの勝利は語れない。川崎ブレイブサンダースで活躍を続けるニック・ファジーカスが、帰化選手として登録されたのだ。B.LEAGUE初年度の得点王、シーズンMVP、ベスト5であり、今シーズンもリバウンド王、ベスト5に輝いている。この試合でも28得点、13リバウンドのダブルダブルを記録。フリスローも11/14と抜群の安定感を見せた。

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 この2人の加入がもたらしたチーム力アップは、竹内譲次の活躍にも表れている。負担が軽減されたことで、思い切りの良さが増したようだ。10得点、8リバウンドに加え、4ブロックショットを記録したスタッツが光る。「塁やニックが加入しましたが、自分の仕事を全うしなければならない。それは気持ちの部分でもそう。彼らに負けないようチームの力になりたい。安定した活躍をしたいと思っているので、1試合だけで満足することなく、これがスタンダードなスタッツなんだという気持ちでやりたいし、それ以上を目指したい」(竹内)と、コメントも力強かった。

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 迎えた第2戦、今度は急造チームの弱点が露呈してしまった。特にディフェンス面は日本代表の連係不足を突かれた恰好だ。相手の帰化選手、ラトリフ リカルドに37得点、10リバウンドを許したが、八村とファジーカスは合計26得点、12リバウンド止まり。ディフェンスのローテーションを見直したり、アシストパスの出どころを抑えたりするなどの対策が必要だろう。

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 ただ、この試合ではアウトサイドの辻直人が12得点、比江島慎が18得点5アシスト、富樫勇樹が7得点5アシストと、従来の日本代表の得点パターンが力を発揮したのは好材料となる。

 「2人に頼り過ぎないことは重要。チームとして、2人を上手く使いたいというのはあるが、そこにフォーカスし過ぎると(よくない)……自分自身の良さも出していきたい。この2試合は持ち味を発揮できず、プレーの選択などを勉強するいい機会。PGとして、よりチームメイトのことが知れたのが良かった」と、富樫は反省と収穫を口にした。

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  「リバウンドやルーズボールなどで負けてしまい、リズムを崩した。もう少しプレッシャーを掛けるべきだったし、オフェンスは不完全燃焼。もっとゴールへアタックする、自分の持ち味を出すことを意識しなければなりません」(比江島)も、Window3を意識したコメントだった。

 2試合を戦った感想を聞かれた八村は、「まだ入って間がなく、その中でチームをつくっていかなければならないのでコミュニケーションが大事。体を張って、自分で得点を取ったり、チームメイトを上手く使ったりして貢献したい」とWindow3への抱負を語った。

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 ファジーカスも、Window3への備えをこうコメントした。 「(自分たちが)波長を合わせるという意味では良かったと思う。どこで自分がボールをもらえばいいのか、一番効率的に攻められるのはどこかを見つけ出したい。そのためにはチームケミストリーが重要で、それは(練習を)やりながら見つけたいと思う。まだ自分にはオーストラリアの情報は入っていないが、とてもフィジカルなチームだと聞いている。相手のフィジカルにしっかりマッチし、リバウンドやルーズボースなど、フィフティーフィフティーのボールをどれだけ取れるか、そういうところにかかってくると思う」

 韓国代表との2戦を通じて、確かに“希望”は見えた。そしてまた、課題もはっきりした。Window3は残る2戦のうち、絶対に1勝しなければ2次予選への道は絶たれる。1勝しても、チャイニーズ・タイペイがフィリピンに勝利すればジ・エンド。6月29日のオーストラリア戦が厳しい戦いになるのはわかっているが、なにも負けを前提に考える必要はない。その試合でいかにアタックできるかが重要であり、そのためにはいかに短時間で、チームとして“波長”を合わせられるかが大事になる。

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  「29日の試合のために、12名に絞らなければならない。(韓国戦は)いい機会、ローテーションをしながらの起用だった。代表の活動期間は少ないが、スピードアップして修正するしかない。12日間あるので、その間に十分修正できると思う」という、敗戦後のラマスHCの言葉を信じたい。なにせ“希望が、帰ってきた”のは確かなのだから。

■FIBAワールドカップ 2019 アジア地区1次予選 Window3
6月29日(金)19:40TIPOFF@千葉ポートアリーナ(千葉県千葉市)
日本 vs オーストラリア

7月2日(月)*TIPOFF未定@チャイニーズ・タイペイ
チャイニーズ・タイペイ vs 日本