「ボロクソ」にされた船生
“本能”の守備でエナジーを与える存在へ

2017年02月09日



文・大橋裕之 写真・B.LEAGUE

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ヤングカルテットの中でちょっと地味
 今季の名古屋ダイヤモンドドルフィンズを象徴するのが、「張本天傑(25歳)」、「中東泰斗(24歳)」、「笹山貴哉(23歳)」、「船生誠也(23歳)」のヤングカルテットだ。現在、西地区2位。首位シーホース三河を追うチームにとって、彼らの活躍は欠かせない。張本や笹山は得点やアシストで、中東は観衆を沸かせるダンクを叩き込むなど、数字や記憶で観る者に強いインパクトを残している。

 一方、船生はここまで33試合中(ベンチ入り)、26試合でスターティング5に名を連ねるが1試合平均3.8得点、2.8リバウンドと平凡だ。正直言って“ちょっと地味”である。

 

“本能”を感じさせる守備
 船生は前橋育英高校から青山学院大学に進み、ユニバーシアード日本代表候補に選ばれた。B.LEAGUEにいる同級生には、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)、原修太(千葉ジェッツ)、加藤寿一(三河)らがいる。その後、名門アイシンシーホース(現三河)に入団するも、出場時間はほとんど手にできなかった。しかしキャリア2年目の今季、名古屋Dに移籍すると先発を任され、主力として1試合平均約20分間のプレータイムをつかんでいる。

 彼の持ち味は「守備」だ。190cm、85kgとフォワードとしては決して大きくないが、リーチが長くしっかりとハードワークをする。ディフェンスの読みも優れており、レジー・ゲーリーヘッドコーチも「うちの大事な選手で、彼の努力とリーチの長さが好きです。ディフェンスの“本能”が良いですね」と、単なる評価ではなく、その素質にまで言及している。仲間がボールを失っても、その近くにいる船生がフォローして事なきを得ることが多く、「あれ? また助けたな」という印象で、指揮官の言う“本能”に納得がいく。

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 「自分のキャリアの中でボロクソ」
 しかし、2月4日のアルバルク東京戦(●86-90)、彼は30分間の出場でマッチアップしたディアンテ・ギャレットにボコボコにされた。緩急自在のドリブルから始まるギャレットの攻撃を食い止めることができず、24得点を奪われ、勝負所の第4Qだけで10得点を献上。ディフェンスはチーム全員でやることも重要だが、目の前の相手に1対1でやられたくないもの。船生は試合後、「そうですね、なんだろう……ギャレット選手はビデオで見ていましたが、実際に(マークに)付いてみると普通の選手ではないと実感しました。プレーする以上は最高のパフォーマンスができるように取り組んだのですが、今日のギャレット選手は“さすが”。やられてしまって……」と、ショックと悔しさが入り混じっていた。

 移籍1年目でプレータイムを得、成長という階段を上っている船生にとって、この経験は、階段の一番下まで蹴落とされたような気持ちだっただろう。随所に好守が光り、ゲーリーHCに最後まで役割を任されたが、「自分のキャリアの中でボロクソ」と口にしたぐらいだ。それでも、大きな壁にぶつかったとはいえ、「ギャレット選手とマッチアップできてよかった」としっかり前を向いており、さらに指揮官からは「ギャレット選手のようなプレーヤーに付くことで、彼も上達していく」と、はい上がることに期待を寄せられている。

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 「エナジーを伝えられる選手」が理想
 
翌5日の第2戦、名古屋Dは延長戦の末、A東京から勝利(○81-77)をもぎ取った。先発した船生は、4ファウルになりながらも27分間の出場で6得点4リバウンドを記録して勝利に貢献。突出した数字ではないかもしれないが、再びギャレットに立ち向かい、アタックに対しても食らいついて仲間のブロックショットを演出した。さらにスティールから2度のワンマン速攻でレイアップに持ち込み、リバウンドに積極的に絡むなど流れもつくってみせた。もちろん、第4Q残り1分を切ってから失点につながるミスに絡んだことは見過ごせない。が、それも成長への糧となればいい。

 「スタートで出してもらっている以上はエナジーをチームに伝えられる選手でありたい」と理想像を語る船生。数字ではなく、ハードワークでチームを支える彼の言葉は説得力十分だ。チームに欠くことができない男の成長を今後も楽しみにしたい。大きくなった分だけ、「ちょっと地味」なんて言えなくなりそうだ。