フェニックス一筋の“鉄人”大口真洋
セカンドキャリアは大学バスケの監督

2018年04月12日



文:皆人公平/写真:B.LEAGUE

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 昨年6月27日、クラブより以下のニュースが発表された。
 「このたび、三遠ネオフェニックスが全面監修し、平成30年4月より始動する『浜松学院大学男子バスケットボール部』の初代監督に、大口真洋選手が就任することが決定いたしましたのでお知らせいたします」

 そして、その時がやって来た。新年度を迎えた4月1日、シーホース三河を迎えたホームゲーム(@豊橋市総合体育館)の試合後、「大口真洋監督壮行セレモニー」が行われた。前日のGAME1は三河に大敗したものの、この日のGAME2は主力の2人、ロバート・ドジャー、鈴木達也を欠く中でオーバータイムの大接戦。残念ながら敗れはしたが、創部間もない浜松学院大学男子バスケットボール部の選手たちに、最後まで諦めない姿を見せることができた。

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 大口監督は1998年にオーエスジーに入社し、以来“フェニックス一筋”。実業団チームとして地域リーグからスタートし、2005-06シーズンはJBLスーパーリーグ(当時)で準優勝。その後、2008-09シーズンより参入したbjリーグでは3度の優勝を経験したが、初優勝時はファイナルで10本の3Pシュートを決め、日本人初のプレイオフMVPに輝いている。

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 多くのブースターに愛され続ける“鉄人”はB.LEAGUEの2シーズン目もロスター入りしており、シーズン終了まではチームの一員。チャンピオンシップ出場に向けてラストスパートをかける仲間やブースターを最後まで見守り続ける。ひょっとしたら、“ここは俺の出番……”という思いが強いかもしれないがそこはぐっと我慢。これからは指導者として、スキルだけでなく選手時代に培ったメンタル、バスケへの真摯な取り組みを学生たちに伝えていく。新たな一歩を踏み出す大口監督に話を訊いた。

──監督のオファーはどういう経緯で受けたんでしょうか?
「クラブ社長からお話を聞きました。『こういうオファーがあるんだけど、受けるかどうかは君しだいだから』って。社長の人脈から、具体的なオファーにつながったと聞いています。もともとはウチが、バスケスクールのために大学の施設を使わせてほしいというお願いをしていたんです。当時、大学に部活動がなかったらしく、『バスケ部を創るから、コーチの派遣をお願いしたい』となったようです」

──浜松学院大学男子バスケットボール部、初代監督ですね。授業も担当するのでしょうか?
「まだ籍はクラブにありますが、選手登録は今シーズンまで。選手としては『現役引退』です。引退後はゆっくりしたいなって思っていたんですが……今のところ授業を受け持つことはありませんが、将来的には論文などを書いて、その資格を取ってほしいという希望も耳にしています。ただ、まずは創部したばかりのバスケ部を一人前にするというか、実績づくりをしなければならないと思っています」

──思い描く「指導者像」はありますか? 熱血派?それとも理論派で行こうとか。
「今はまだゼロの状態です。自分なりのイメージはありますが、学生たちを目の前にすると、『イメージ通りいくかなぁ』と考えてしまうこともありますから。いろいろなアイデアは浮かぶんですが、学生たちには自分で考える力を備えてほしい、自分たちで考えるところから始めてほしいと思っているんです。ただ、『自分たちで』というのはハードルが高い。いくつも判断材料を提示し、その中から“考えて選んでいく”ことから始めなければなりません。僕自身、指導者としてはビギナーですから、そういう意味では手探り状態から始める覚悟はできています」

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──将来はコーチに、というのは視野に入れていたんでしょうか。これまでのキャリアが活かせると思いますが?
「学生とプロは違いますから、そのままでは上手く伝わらないことがあるかもしれません。僕がオーエスジーに入社した時に、以前チームの指揮を執っていた中村和雄へッドコーチが就任しました。中村HCがチームに導入したマインドというか、バスケに向かう姿勢というのはプロでも学生でも一緒かなと思います。コートの上だけではなく、私生活でも自分を律することが大切だと教わりました。それは、体育館に入る時は脱いだ靴を並べるとか、挨拶をするとか、簡単なようで疎かにしがちなこと。バスケが上手いだけがプロじゃない、バスケだけで食っていけるのはほんの一握りだから、『ヒューマンスキルが大切』なんだと伝えたいですね」

──こんなチームを育ててみたいとか、こんなバスケットがやりたいというのはいかがでしょうか?
「本当は速い展開のバスケット、トランジションゲームがいいですね。観ていて面白いと思うんです。それがいいんですけど、すぐには要求しません。ゆっくり組み立てながらの展開も大事にしながら、少しずつ成長してほしい。4月14日に東海学生バスケットボール大会がありますが、そこがデビュー戦になります」

──大学の指揮官として、楽しみにしているところと、覚悟しているところを教えてください。
「すべてが楽しみですよね。当然、未完成の学生たちですから、どこまで成長していくのか……逆に、それが苦労の種になるんだろうと思っています。強豪校からの入部者はまだいないと思いますから、どれくらいの負荷をかけていいのか、モチベーションをどう考えるかといった面では難しさがあるかもしれません。学生たちの成長の前に、自分が監督として成長しなければならないですね。一歩ずつ、焦らないで取り組んでいこうと思います。バスケの楽しさ、厳しさ両方知っているつもりなので、学生たちにはバスケから何かを学んでほしい、何かをつかんでほしい、そう思っています」

 大口監督はプレーヤーとして活躍するだけでなく、ビジネスパーソンとしてキャリアも積んでいる。それだけに、学生たちにとっては良き相談相手となるはずだ。冒頭のニュースの中に、「三遠ネオフェニックスが全面監修し、平成30年4月1から始動」という一文があった。いずれは大口監督が育てたプロ第1号が三遠の一員としてデビューするかもしれない。その時を楽しみに、セカンドキャリアをスタートする大口監督にエールを贈りたい。