B1復帰へ必要最低条件の地区V 
悲劇を歓喜へ、秋田が負けない理由

2018年03月29日



文:大橋博之/写真:B.LEAGUE

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「必要最低条件」の地区優勝
 「1部に上がるための必要最低条件のひとつ」と田口成浩が表現した“B2東地区優勝”を、秋田ノーザンハピネッツが3月25日のアウェイ、群馬クレイサンダーズ戦で決めた。この日は1Qこそ相手に先行を許すが、シーズンを通して磨き上げてきた激しくプレッシャーをかけるディフェンスで圧力をかけ続けて2Qに逆転。群馬のピック&ロールをハードなディフェンスでつぶし、スイッチでしつこくマークについていくなど、28ものターンオーバーを誘発した。

 さらに相手の得点源であるトーマス・ケネディには身長で約20cm劣る182cmの中山拓哉がマッチアップしても競り負けず、逆に彼をイラつかせて9得点に抑えた。平均得点でB2トップクラスの81.9得点を叩き出す群馬を57点に抑え込み、改めてその強さを証明した。

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20連勝で3カ月負けなしの理由
 ここまで秋田の勝率は9割を超える。昨季18勝でB2に降格してしまったチームは、ジョゼップ・クラロス・カナルス(以下ペップ)ヘッドコーチによって、ハードワークをいとわない守備を起点としたチームへと変貌。ボールを奪いに行くタイミングやほころびのないローテーションなど、チームに馴染むまでは時間を要したが、2018年に入ってから3カ月間、負け知らずの20連勝中だ。

 チームの主軸を担う中山が、「ペップのバスケットは特殊なので、戦術理解に難しいところがありました。けれども、少しずつ慣れてきた今は外国籍選手にも(マークに)つけるようになってきています」と話せば、田口も次のように成長の手応えを語る。「最近はヘッドコーチの言っている言葉の意味が、一人ひとり理解できるようになってきました。何ができて、何ができないかということがわかってくれば、ビデオを見直した時に、言われたことができていないことがすぐに理解できます。本当に“チーム”になってきて、ケミストリーもコミュニケーションもとても取れてきています。ひと言で5人がまとまれる合図もあります」

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 加えて、スターターを担う中心選手の長期離脱が少ない。フィジカルに負荷のかかる戦術を採用しているが、タイムシェアで負担を最小限に留めていることが奏功した。「(出場時間を)22、23分を最長にしたい」とペップヘッドコーチは、12人の全選手を信頼してコートに送り出し、選手がその期待に応える好循環ができている。

B1復帰への通過点にすぎない
 しかし、秋田にとって地区Vは通過点。この試合も60試合のレギュラーシーズンのたった1試合に過ぎないだろう。ペップHCが「クラブにとって(地区優勝は)すごく素晴らしいことだと思います。ただ我々が最終的に目標としているところではない」と語り、中山も「とりあえず(地区優勝で)ひと安心ですけど、ここがゴールではない」と話す。田口は「正直、嬉しいも何もないです。率直にこれでB1に上がれるなら嬉しいですけど、全然そんなんじゃないですしプレーオフ進出が決まっただけ」と、淡々と振り返った。

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 さらに、42勝4敗が示すように、勝ち癖がついてきた状況についても、田口の表情が緩むことない。すべてはB1復帰が達成できてこそ。「僕らはプロの世界にいて、結果がすべてだと思う」と、キャプテンとして、背負うものが大きいがゆえに、最後まで隙を見せることはない。「“優勝してB1に上がって勝ちきるチームを作る”と最初に目標を掲げていますので、いくらこの先全部勝ったとしても、プレーオフで負けてB2にステイだったら、誰一人喜ぶことはできません。すべてはプレーオフで勝つこと。そこが一番大事になってくる、その結果が必要です」

悲劇を歓喜に変える挑戦は続く
 レギュラーシーズンもラスト14試合。次(3/28)はホームに岩手ビックブルズを迎える。勝てばプレーオフのホームコートアドバンテージが決まる大切な一戦だ。さらに中2日で西地区首位のライジングゼファーフクオカ、4月に入れば同2位の熊本ヴォルターズとの対戦が待っている。5月の昇格レースにおける前哨戦と言っていい。

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 難敵との対戦が続くが、ペップHCは大塚勇人やクリス・カヨールら加入して日が浅いメンバーとの連携が深まることが、まだまだ伸びしろと考えている。さらに「各チーム、スカウティングをしてくると思いますので、これからも、“新しいもの”を入れていきたい」と、戦術の幅を広げていくことも示唆した。

 そして田口は、チームの要として覚悟を持って、次のように語った。「残りの試合では、“プレーオフが今から始まるんだ”という気持ちを毎試合持ちたい。これで負けたら上がれないという気持ちを持ってやれば、もっともっとひとつのプレーに“執念”が増してくるので、そういったところをチームで共有して行けたらと思います」

 クレイジーピンクの悲劇を歓喜に変えるべく、タイムアップのブザーがなるまで彼らの挑戦は続く。