常勝軍団で“良さ”を出せるか否か
仲間も期待する村上の三河での適性

2017年10月30日



文:大橋裕之/写真:B.LEAGUE

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「思っていなかった」常勝軍団での挑戦
 「嬉しかったです。この歳にしてもう一度、強いチームで挑戦できるとは思っていなかったので」――今季よりシーホース三河に入団した背番号8、村上直はチームからオファーがあった当時をこう振り返る。シーズン中に31歳を迎える男は、8シーズンを過ごした京都ハンナリーズを離れ、歴史と伝統のある常勝軍団の一員となった。これまで長谷川智也(現サンロッカーズ渋谷)、狩俣昌也といった選手が大きな成長を遂げたように、彼にもプロ選手としてステップアップを果たすべく、その移籍のチャンスが巡ってきた。

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“良さ”を出せるか否か
 村上の持ち味は、試合のテンポを加速させるスピードに乗ったボールキャリーや、目の覚めるような鋭いドライブだ。強いリーダーシップとゲームコントロールに長けた橋本竜馬や、シュート力のある狩俣といったガード陣と、決定的に違う強みがある。大阪エヴェッサとのホーム開幕戦(10/7)では約17分間の出場で、12得点をマーク。89 – 61の勝利に貢献し、ヒーローインタビューを受けるほどの活躍でインパクトを残した。

 一方で、アウェイの横浜ビー・コルセアーズとの第1戦では、橋本と金丸晃輔を怪我で欠く中、チームは73 – 79で接戦をモノにしたものの、本人は約13分間の出場。アシストは3つを記録したが、無得点でファウル3つと、流れを生み出したとは言えず、アグレッシブな姿は影を潜めた。鈴木貴美一ヘッドコーチは「良さを出さないで、丁寧にやろうとしすぎた。試合中も注意はしたのですが、もっとアタックすれば3対2で簡単に攻めることができるところを、5対5(の状況)にして難しくしていた」と、彼が強みを出し切れていないことを指摘した。

 この日は横浜がゾーンディフェンスを敷いていたことでペースが上がりにくい展開だったこともあったが、本人も「リバウンドからもっと速攻を出せたと思います。今日は自分の持ち味が出せず、自分でリズムを崩していた」と、反省しきりだった。

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仲間も期待、村上の新スタイルへの適性
 しかし従来のスタイルから進化を目指す今季の三河にとって、村上の成長は不可欠だ。リーグ屈指の強さを誇るハーフコートバスケに加え、守備から素早く攻撃に転じて得点を重ねる“武器”を磨こうとしている。テンポアップのために一気にギアチェンジができるガードとして、彼は適任であり、それゆえ期待も大きい。先の鈴木HCのコメントはその裏返しである。

 さらに同じポジションの狩俣も次のように彼のことを教えてくれた。「本当にチームで一番速いので、武器になりますし、チームも今季は速い展開に持っていこうとしているので、(村上選手の持ち味が)すごく生きると思います。いまの段階で僕から見るとすごく良いので、このまま継続してやっていって欲しいです」。移籍先で自分の強みをチームメイトに理解してもらい、アジャストしていくことは、飛躍の近道となる。彼と同じ境遇を経験してきた狩俣が、新戦力加入の効果を感じているならば、その効果は徐々に大きくなっていくだろう。

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プレッシャーをモチベーションに進化の証へ
 開幕してまもなく1カ月。チームから期待され、常勝軍団でプレーすることにより、「プレッシャーは感じている」と村上は話すが、それもこの環境に身を置いたからこそ実感できたことであり、「自分にとって喜ばしいこと」とモチベーションにつながっている。「ターンオーバーを抑えて、常に自分の良さを出したい。やっぱり強豪のシーホースに来たわけですので、チームが強くても、試合に出られなければ意味がないです。いまは橋本選手が怪我で出られないということもあるので、自分のチャンスだと思ってやりたい。今日みたいなプレーをしていてはダメだと思う」と、次の試合に向けて気持ちを新たにした。

 横浜との第2戦では出場時間こそ約11分であったが、切れのあるドライブを随所に発揮して、“らしさ”を見せた。橋本が復帰した三遠ネオフェニックス戦では出場時間ゼロに終わったが、これも壁を乗り越える糧とすればいい。

 昨季の終盤戦、橋本が欠場した試合で狩俣が司令塔不在を感じさせないパフォーマンスで、川崎ブレイブサンダースを破る力となり、鈴木HCが「チームへ非常になじんできた」と賛辞を贈った。今度は彼が指揮官にそう言わせる番だ。己のパフォーマンスを高め、チームメイトのナイスプレーを引き出すアシストで、「三河の進化を一段と感じさせる証」を目指す。