名門でプレーする難しさと価値
控え二ノ宮へ熱く、厳しい声援を

2017年04月13日



文・大橋裕之 写真・B.LEAGUE

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出場時間は僅かだが、名門一筋のPG
 新旧の日本代表選手や元NBA選手といったエリートたちが練習からしのぎを削る、アルバルク東京でプレータイムを勝ち取ることは容易ではない。そんな環境で、PGの二ノ宮康平は6シーズン目を戦っている。在籍年数は正中岳城(10シーズン)、伊藤大司(7シーズン)に続いて3番目(松井啓十郎も同じ)、上から数えたほうが早く、チームの歴史を知る一人と言っていいだろう。しかし、その一方で入団以来、満足のいくプレータイムはつかめていない。最も長くプレーできた2014-2015シーズンでさえ平均15分程度である。

 ただひとつ伝えておくと、彼のスキルやバスケIQは高い。日本バスケ界の強豪校である京北中学校から京北高校へ進み、慶応義塾大学ではインカレ優勝を経験するなど“名門”を歩んできた。173cmとサイズはないが、それを補うスピードや3Pシュート力を持つ。PGとして味方の動きを引き出すべく的確にパスを配球し、攻撃にアクセントをつける力は、短い時間でもいかんなく発揮される。4月9日の仙台89ERS戦(84-63)では、途中出場ながら11分間で11得点を挙げた。でも本人は「えーっと、ま……いつ出るかわからない立場にいるので、そこでしっかりと(試合を)つないで、いい流れをつくれたことは良かったです」と、そんなに嬉しそうではなかった。

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難しい役割であり、信頼も厚い
 選手である以上、1秒でも長くコートに立ち、1点でも多く点を取り、勝負のかかる局面で活躍したいと思うものである。先ほどの二ノ宮の言葉からは、与えられた役割に満足せず、むしろその難しさと折り合いをつけながらプレーしていることを感じた。彼に突っ込んで聞いてみると、「(試合に向けて)すごい準備をしても出番が回ってこないこともあり、そういうときはメンタルにもきます。だけどこうやって少しでもいいパフォーマンスができれば、準備をしてきて良かったと思えます。本当に今のチームではそれが役目だと思うので、割り切ってやっています」と本音を漏らした。

 彼の試合に対する「準備」、ひいては日頃のバスケへの取り組みは、チームからとても信頼されているのであろう。先の仙台戦ではドライブでフローター気味にショットを決め、3Pシュートを沈めるたびに、ベンチの仲間たちは自分のことのように盛り上がりを見せた。さらには伊藤HCも「良い活躍をしてくれました。いまは菊池(祥平)も(田中)大貴も万全ではない中で、それ以外の選手たちが頑張らないといけない。二ノ宮は常に準備をしてくれているので、彼のような選手がベンチにいることは心強い」と、頼もしい存在であることを明かした。

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ここでプレーする“価値“とは?
 自分の役割をまっとうする二ノ宮であるが、彼の力量があれば、きっと他のチームに行けばメインガードを務めることができるはずだ。昨季まで所属した宇都直輝(現・富山グラウジーズ)や張本天傑(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は移籍によってチームの主軸となり、オールスターゲームに選出されて、名実ともに大きく飛躍した。実力あるB.LEAGUEの選手はプレーする場を選択することも可能だ。そんな中、本人はA東京でプレーを続ける“価値”をどう見出しているのか?

 「やっぱり常に優勝を狙う、常に勝たないといけないチームにいる以上、観ている方にも良いパフォーマンスを見せないといけないという使命感があります。必ずチャンスは来るので、そこでレベルの高いプレーで活躍してやるぞ、という気持ちをいつも持ってやっています」

 名門に身をおき、プレーするが故に醸成されたであろう「使命感」。これを口にできるところに、自分の積み上げてきたことに対する、確固たる自信があり、控え選手とは言え、黒と赤のユニフォームに袖を通してコートに立っているプライドがある。ちょっと自信がなさそうな印象もあったが、この言葉を聞く限り、それは払しょくされた。

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控えの司令塔には熱く、厳しい声援を
 レギュラーシーズンも残り9試合。A東京はチャンピオンシップ進出を確定させて、逆転の地区優勝を狙っている。が、今季は昨季とメンバーが大きく変わり、チームにどこか“もろさ”を感じる試合が散見される。シーズン途中の外国籍選手2名の入れ替えや、主力のケガなど、順調とは言えない状況が続く。だからこそ、いままでの歴史を知り、限られた機会のために、全力を注ぐニノ宮は必要不可欠だ。本人も「ベンチで見ている時間が長い分、ゲームの流れもよく見えています。どんな状況でもコートに立てる時間があれば、チームに足りないことはなんでやりますし、勝利に向けてエナジーを与え、良いテンポ(のバスケ)をしっかりつくりたい」と、B.LEAGUEの初代王者を目指すチームの一員として、意気込みを語る。

 A東京はディアンテ・ギャレットや田中大貴だけではない。出場時間が平均5分程度ではあるが、ニノ宮の司令塔としてのスキル、マインドは素晴らしいものがある。B.LEAGUEになって初めて彼を見る方もいるかもしれないが、コートに立ったときには、「控えガンバレ!」といった声援よりも、「勝負を決めて!」といった主力選手に期待するような熱く、厳しい声援を送ってほしい。そうすれば、彼はもっと輝くはずだ。