『もっとエディ、行けよ!』
名門で奮闘する5人制プロ未経験の原石

2017年03月24日



 文・大橋裕之 写真・B.LEAGUE / ©ALVARK TOKYO

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目立った実績なしで名門クラブへ入団
 日本バスケ界の名門クラブ、アルバルク東京。そこに“セオン・エディ”という選手が今季、入団した。「誰だ!?」と思った方も少なくないはずだ。一見すると外国籍選手のような印象だが、東京生まれでインターナショナルスクールに通い、日本語も英語も操れる。米国の大学では学位を2つ取得し、卒業後はビジネスマンになった。

 彼をコートで初めてみたのは、日本でNo.1と言っていい屋外5on5トーナメント「ALLDAY」だった。2014年に友人たちと参戦したCRAYON(クレヨン)というチームで2大会連続のベスト4に進出。プロ選手や外国籍選手もやってくる代々木のストリートコートで頭角を現した。翌年には世界最高峰の3×3リーグ、「3×3 PREMIER.EXE」に参戦し、活躍が認められて3×3日本代表候補に名を連ねた。

 しかし、エディには5人制のプロ経験はなく、過去にさかのぼっても“日本一”や“全米一”になったこともない。A東京には、田中大貴や竹内譲次、正中岳城ら新旧の日本代表選手、ディアンテ・ギャレットやジェフ・エアーズといった元NBA選手という実力も実績も豊富なキャリアを持つ選手がいる。それだけに、彼のバックボーンは異色であり、5on5のキャリアがない原石と言ってもいいだろう。昨年、初めてオファーを受けたときのことを、

 「すごくビックリしました。アルバルクから来ると思っていなかったです。これは、本当に僕へ来ている話なのかなって……」と振り返る。

 それでも人生の大チャンス、挑戦しない手はない。「(オファーは)嬉しかったです。伊藤ヘッドコーチと会って話をし、入団を決めました」と、プロの門を叩いた。

出場時間は約4分、だがコートに立てる喜びも
 A東京の選手層はリーグ随一の厚さだ。さらにベンチ入りは最大12人の定員に対して、チームの保有選手は13人。1人は必ずメンバーアウトだ。エディはケガ人などが出ないとベンチ入りさえできないこともある、ここまでの45試合中14試合でベンチ入り、2試合の出場でプレータイムはわずか3分52秒だ。

 それでもA東京のユニフォームを着て、コートに立てることは非常に大きな喜びだという。「(その気持ちは)とても強いですね。試合に出られるようになったのは、コーチから安心や信頼を獲得できてきたからだと思います」と話す。3月18日に“渋谷ダービー”となったサンロッカーズ渋谷戦で、点差の離れた第4Qに4試合ぶりに出場。4,000人を超える観客の前でプレーしたときのことを、こう振り返った。

 「コートに出たときはこの光景を見て、ひと息置いて試合に入りました。やっぱり緊張しました」

 彼がいま経験することは、すべてが初めてなので無理もない。率直な気持ちだ。この日も初得点はお預けとなり、「取りたかったですよ!」と悔しそうだったが、「いまはコーチや先輩たちに教えてもらっていることを押さえて、ちゃんとプレーできるようにしています。緊張感を抜いていけば、得点も取れると思う。落ち着いて進んでいこうと思っています」と、焦らず前をしっかり見ている。

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持ち味をチームの中でどう表現するか
 エディの持ち味は、身体能力をフルに活かしたダイナミックなドライブと3Pシュートだ。3×3 PREMIER.EXEでもそうだったが、“伸びのある突破”からペイントエリアへ侵入し、対空時間の長いジャンプ力を活かしてゴールを決めていた。本人も「オープンで打つ3Pを絶対に決める。スラッシャーとしてドライブやカットインからのレイアップを決めること」に自信をのぞかせる。

 今後、その強みをいかにチームの中で表現していくかが、プレータイムを獲得する鍵となるだろう。A東京のバスケは選手を型にはめるようなシステマチックなものではなく、5人それぞれの良さを活かして、よどみなく動く“フロー(=流れ)のバスケ”だ。個々がお互いの持ち味を理解し、冷静に状況判断することが求められる。もちろんそこには、フローを壊さないというだけでなく、「選手として主張すべきところで、しっかり自分の力を発揮する」という意味も含まれている。本人いわく、「落ち着ついてプレーすることが僕のフォーカスですけど、いまは先輩たちから『エディ、もっと行けよ!』という声をかけられています。オープンシュートがあったらちゃんとシュートする、ドライブができるならドライブをする、もうちょっとガッついていけというアドバイスです」

 流れを乱さず良い意味で“エゴ”を出すという、難しい課題だが、ステップアップには避けては通れない。

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彼の成長は夢を与える存在につながる
 レギュラーシーズンもあと15試合。エディは「チャンスがあってもまだまだ頭が一杯で考えてしまう」こともあるという。名門で学び、思考し、プレーできる喜びを最大限に感じながら、チームの力になるべく奮闘中だ。自分の強みを活かして、指揮官やチームメイトからより一層の信頼や期待を集めてほしい。

 また本人はこんなことは思っていない(いや、思う暇がない?)だろうが、彼のようなノンキャリアの選手がB.LEAGUEのトップチームに入団し、プレーする姿は、これからプロを目指す選手や子どもたちに夢や希望を与え、観るものをポジティブな気持ちにさせるだろう。ポテンシャルは十分にある。楽しみだぞ、エディ!