埼玉から世界へ──
故郷に錦を飾った3人が見据える2020

2018年01月10日



文:吉川哲彦/写真:大澤智子

0F4A8209

さいたまスーパーアリーナが聖地に、“地元開催”に夢を馳せる
 昨年8月末の1次ラウンドから熱戦が繰り広げられた第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会。今大会はフォーマットが変更されたことに加えて、例年メイン会場だった国立代々木競技場第一、第二体育館の改修工事に伴い、男女8チームずつで争われるファイナルラウンドがさいたまスーパーアリーナで開催された。

 2000年に完成した同アリーナは、そのこけら落としが日本とスペインによる男子バスケットボールの国際親善試合であり、2006年には男子世界選手権のメイン会場にもなっている。今回ファイナルラウンドに進出した中では、新潟アルビレックスBBの庄司和広ヘッドコーチがこのアリーナの記念すべき初得点を挙げたほか、川崎ブレイブサンダースの北卓也HCもコートに立った。

 しかし、その他にバスケットボールの試合会場として使用された実績は少なく、世間には格闘技やコンサートの会場として認知されているのが現状。2012年に行われたbjリーグオールスターにも出場した庄司のようにこのアリーナで複数回プレーした経験のある選手は極めて稀だ。

 そのさいたまスーパーアリーナが、2020年東京オリンピックのバスケットボール会場に選ばれたのは周知のとおり。1972年のモントリオール五輪以来となる男子の出場にも期待したいところだが、より期待がかかるのは2016年リオデジャネイロ五輪で決勝トーナメントに進んだ女子だ。その中でも、今回は埼玉県出身の3選手に“地元開催”への思いを尋ねた。

0F4A8707

舞台に向けた決意と準備、2020年は大歓声の中で
 WNBAシアトル・ストームでもプレーしている渡嘉敷来夢(JX-ENEOSサンフラワーズ)は、言うまでもなく東京五輪では大黒柱として日本を引っ張る立場だ。そんな渡嘉敷もこのアリーナでプレーするのはさすがに初めてだが、「ここでプレーしたことがあるということも強みになると思うので、良いウォーミングアップになったと思います」と、2020年にしっかりと照準を合わせている。

 話を聞いた1月4日は、12時開始の第1試合だったこともあって観客数は思わしくなかったものの、アリーナのスケールの大きさにはやはり高揚感を覚えたようだ。
 「気分はすごくいいです。これだけの客席が埋まるのを見てみたいですよね。そういう中でバスケをやるのも選手のモチベーションになるので、楽しみです」。

 もちろん、春日部市出身で「かすかべ親善大使」も務めている渡嘉敷にとっては、このアリーナでプレーすることにも大きな意味がある。
 「東京でオリンピックがあって、そのバスケの会場が埼玉というのは自分にとっては最高のシチュエーション。そこに向けて自分がどう伸びていくか、どんなパフォーマンスができるかが求められる。あと931日、頑張っていきたいです」。

0F4A3819

「オリンピック出場」を目標に自らの成長を期する時
 渡嘉敷と同じJX-ENEOSに在籍する宮崎早織は川越市出身。1カ月ほど前には入団4年目で初めて地元川越に凱旋し、家族や知人が多数駆けつける中でプレーを披露した。今回の皇后杯ファイナルラウンドも「いろんな人が来てくれるんだろうなと思って緊張した」というが、「やっぱり応援してもらえるのは励みになりますし、頑張りたいなって思えます」と感謝の気持ちをより強く持ったという。

 その宮崎は、まだ日本代表のユニフォームに袖を通したことがない。「頑張ってオリンピックに出たいというのはすごくあります。でも、自分のポジションは上手い選手が多くて競争率が高い」とその厳しさを本人も認めているが、リオ五輪で世界の名だたるスターと肩を並べた吉田亜沙美がチームメイトであることは、宮崎にとってはこの上ないプラス材料だ。

 「自分はポイントガードらしいポイントガードではないので、練習中からキープ力やパスを、吉田さんや藤岡(麻菜美)さんを見て学んでいます。2人の良いところを吸収しながら自分の持ち味を出していければと思います。川越で試合ができたのはすごく嬉しかったので、またここでもプレーしたいです」。

0F4A5717

 シャンソン化粧品シャンソンⅤマジックは準々決勝で敗退し、さいたまスーパーアリーナでの試合は1試合にとどまったが、児玉町出身の落合里泉はこのアリーナでのプレーをことのほか喜んだ。
 「ここで世界選手権があった時に見に来ていたので、そのコートでできるのがすごく嬉しかったです。試合になると奥行きや高さがあって感覚をつかむのがなかなか難しいんですけど、観客席が埋まったら感動するだろうなと思うので、今日は勝ちたかったです」。

 県外の高校を選んだ渡嘉敷と宮崎に対し、落合は「埼玉を強くしたい」という思いで埼玉栄高校に進学。昨シーズンまでは地域密着型クラブの東京羽田ヴィッキーズに在籍するなど、Wリーグの中では“地元愛”が強い選手だ。

 その落合がシャンソン化粧品に移籍した理由を、本人はこう語る。
 「羽田の時はベスト8というチームの目標があって、私もそこを目指していました。昨シーズンそれができて、今度は自分がレベルアップして自分の目標を達成したいと思ったので移籍を決めました。バスケットをやる上で、代表でプレーすることはずっと目標としてありますし、一番近い目標は2020年。日本を背負ってこのコートに立つのが夢です。お世話になった人たちにその姿を見てもらうことが、埼玉への恩返しにもなると思います」。

 シーズン開幕前には代表合宿にも招集され、リオ五輪で世界と渡り合った高いレベルを体感。夢実現へ、着実に歩みを進めている。

 五輪という晴れ舞台に立てるのは12名。渡嘉敷はもとより、宮崎や落合も地元埼玉への思いを胸にその名を連ねることができるか、さらなるステップアップを期待してやまない。